2.
第18話
翌日。化学の授業が終わるなり机に突っ伏したあたしを、何かがツンツンと小突いた。
「マキちゃん、ちょっといい?」
「……あー、紗奈」
紗奈は「寝不足?」とあたしを心配する素振りを見せた。
紗奈はあたしの小学校以来の親友で、この学校で“お嬢さん”の看板を背負って立てる数少ない生徒だ。
肩までの黒髪に縁取られた小さな顔に愛らしい顔立ちは、まさに天使。
そんな子に「ううんダルいだけです」なんて絶対言えない。この魔性の天使め。あたしは体を起こした。
「これ、来月の予定表」
そう言って差し出されたのはエクセルで作られた味気のないプリントで、セルの中には日付と曜日、マルとバツがひしめき合っている。
「こんなのもらったってしょうがないのに…」
「だめだよ! マキちゃんだって正式な部員なんだから、ちゃんと顔出して」
拗ねたような顔をした紗奈に、そういえばこの子部長だったっけ、と思い返しながら予定表を見渡す。
こんなに毎日ピアノばっか弾いてられるかよ、なんて内心悪態をついた。まあ口には出さないけれど。
四年前、ここの中学に入るとき、紗奈に誘われてピアノ部に入部した。もっとも、あたしは気分屋なせいで中三くらいからまともに行ってないけれど。
「再来月には文化祭だから、そろそろ曲も決めてね」
……げ。もうそんな季節か。
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