第17話

いっときの興奮とか、衝動とか。


ひと眠りしたら消えてしまいそうな、そういう脆い感情を、あたしは失くしたくないんだと思う。


それは、言葉にすればきっと、ずっと残すことができるはずで。もちろん、本当の意味では感情は形にも、言葉にもならないと、わかってはいるけれど。


それでも残したい、忘れたくない。


だからあたしは、細心の注意を払いながら、自分の気持ちを文字におこしていく。




目を閉じた。


――あの音楽が、カラフルなひかりが、弾けた。




あたしが自分の心を表現するのにぴったりの言葉をみつけても、野川さんにそれが伝わるかどうかわからない。


その気がなくても、悪く受け取られてしまうかも――傷つけてしまうかもしれないんだから。





やわらかく。



そうして、心に迫るものを。





メール画面と格闘しながら一時間。


ようやく出来上がったメールを送信して、あたしは心地よい疲労感に目を閉じた。

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