第7話
今まで聞いたことのなかったその激しい音楽に、たちまちあたしは心を奪われてしまった。
もっとも、夜な夜な母さんの目をかいくぐってテレビを見ようとしたせいで、このことはすぐにバレた。母さんが言うには、ロックなんて騒々しくて品のない音楽は、うちの子にふさわしくない、とかなんとか。
こってり叱られたあたしは、むくれて部屋に閉じこもった。
その夜部屋にやって来た兄貴は、あの黒くて大きなヘッドホンをあたしにくれたのだった。
「――おーい、マキ」
「……へ?」
ぼんやり回想に浸っていたら、突然意識を引き戻された。兄貴が前方を指でさす。
「着いたぞ」
え。
「もしかして、ここ?」
駅から少し離れた大通りに面したこぢんまりしたビル。
“BLUE”
青地に白い文字が染め抜かれたようなそれが、ライブハウスの看板らしい。
「入るぞ」
「え、うん」
急に緊張でドキドキ言い出す胸をおさえて、兄貴の背中を追う。
「二人です」
兄貴はスマートにチケットを二枚買うと、もたもたするあたしの手を引いてエレベーターに乗り込んだ。
ライブが行われるのは三階らしい。息をつく暇もなくエレベーターが止まり、ドアが開く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます