第6話

* * *




「じゃあ着替えといで」


「へーい」


あの約束から一週間、放課後に兄貴と学校の近くで待ち合わせて、あたしはいよいよライブハウスに行く。


兄貴から私服の入ったカバンをうけとって、駅前のデパートのお手洗いに入った。実際はどうであれ建て前はお嬢様学校だから、制服での外出にはうるさいのだ。


世間の評判を信じ切っている母さんには悪いけど、あたしみたいなのがいる時点で気づいてほしい。あそこはそんなおしとやかな学校じゃない。


さて、と。


「……お待たせー」


「ん、行くか」


重たいセーラー服から、Tシャツに七分丈のパンツに履き替えると、不思議と気分も軽くなる。


――ふと、はじめてロックに出会った夜のことを思い出した。


うちの家族はあまりテレビを見ない。テレビの見過ぎは教育上よろしくないと信じている母さんが、テレビに関する一切の権限を掌握しているからだ。


その夜、母さんはたまたまどこかに出かけていた。動機は何か、軽い反抗心だったのかもしれないけど、今となってはそんなのどうでもいい。


とにかく、あたしはそのとき、テレビをつけた。


そして、あるロックバンドに出会ったのだ。

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