第3話
「またそんなにたくさん盛って……男の子じゃないんだから」
「だってこれくらいじゃなきゃ、足んないよ」
「あんたって子は……もうちょっと女の子らしくしたらどうなのよ」
母さんの言いたいことはわからないでもない。
この人の考える理想の娘は、小さくて可憐で従順で、おしとやかなお嬢さん、らしい。今時、そんな女の子なかなかいないと思うけど。
とにかく母さんは、あたしを“お嬢さん”に育てるべく幼稚園の頃からピアノやらバレエやら習わせて、中学からは私立の女子校に通わせている。
そんな娘が部屋にこもってゴツいヘッドホンでロックバンドばっかり聴いてたら、そりゃあ文句も言いたくなるだろう。不満を持つのはもっともだ。
だけどあたしがロックを好きで、何が悪い。
「まあまあ母さん、それくらいにしときなって」
見かねた兄貴になだめられ、母さんは無言で箸を進めた。
あたしより七つ年上の兄貴は今年で社会人二年生だ。一年前、名門大学を卒業して有名な企業に就職した。まったくよく出来た息子だ。
それに比べあんたは、ってことらしい。
「……ああ、そうそう。マキ」
「なに」
「そろそろ進路希望調査でしょ? あんた、ちゃんと考えてる?」
考えてないでしょ、とでも言いたげな顔。
「……考えてるよ」
「そう? 何か相談があったら母さんに言うのよ」
ご飯を口いっぱいに詰め込んだまま、うん、と頷いた。
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