第2話
「――マキ!!」
「ぎゃッ」
――突然の衝撃、無音に目を見開くと、目に入ったのは人工的な光。見慣れた部屋、天井の素っ気ない蛍光灯。
ドアの前に仁王立ちしたその人の右手には、我が相棒・ヘッドホンがとらわれている。
「か、母さん……いつからそこに」
「さっきからずっと呼んでるでしょ! いい加減下りてきなさい!」
お怒りの母さんは、つかつかと歩み寄ってあたしにヘッドホンを押しつけると、派手に音を立てながら階段を下りていく。
黒くてゴツゴツした、お世辞にも可愛いとは言えないヘッドホン。これの良さは母さんには理解できないらしい。カシャカシャとわずかに音漏れするそれを机の上に置いて、ウォークマンの再生を止めた。
居間に下りていくと母さんと兄貴はもう食卓についていた。あたしはおとなしく、自分のご飯をよそいにいく。
「マキったら、また音楽聴いてたのよ。あんたがヘッドホンなんかあげるから……」
「それくらい許してやりなよ、母さん。マキは他所の子よりずっといい子だろ」
「……でも、」
その会話に内心うんざりしながら、お茶碗をテーブルに置く。ゴトンという音に、母さんはまた眉をひそめた。
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