第二十章

 朋美の寝息が聞こえる。

 この子の寝息は好き。寝ている顔は本当に可愛い。まつ毛も少し長めで、寝息が顔に掛かる。掛かるくらいの距離で寝ているから、朋美の全てを、生きている全てを感じる。食べちゃいたい。いつもそう思う。

 夢の中でね朋美とデートしていた。

 何処かの温泉街。地元じゃない。ティックトックで見た映像とも違う。多分、願望とティックトックとここが良いのかなぁって毎日考えながら過ごした事が夢に出て、まるで架空の温泉街になったんだと思う。そこは新潟の部屋風呂付き温泉とも違う。部屋風呂はあったけど、そこから直で温泉街にも出れる。そんな場所、日本にも多分世界にもない。だから夢なんだと思う。

 朋美は少しナイーブな時、子供欲しいのに産めない、妊娠できないのを悩んだりしている。養子縁組も考えたけど、朋美はそれでも納得することはないと思う。この子は血の繋がりを大切にしている。古い地域で生まれたからそう言うのは大切だし、古い地域ほど同性愛の理解もまた違う。でも、朋美の親戚は基本的に優しくて寛容で理解ある人が多い。だから朋美の悩みは朋美自身の悩みで、好きと同性だから子供出来ないのとそれでも私と別れるほうが不幸で悲しくて、でも、私と別れたほうがいいのかなとかそう悩んでナイーブになっていた。

 そういうのがまだ子供なんだと思う。

 まぁ、私もまだ子供なんだけど。

 ようやくこの街もパートナーシップを入れた。

 同性でも結婚と同程度の権利を保障してくれて、不動産も行政も病院もそれに準じたことをしてくれている。例えば朋美が病気のときは私が見舞いにも行けるし、もしも危篤の時も家族として私が看取りまでみれる。

 お墓の納骨までだってみれるし、その後も朋美の夫としてそばにも居てやれる。

 夫、そうこの国ではまだ同性でもそういった縛りなのだけど、別に妻と妻の関係とかそういうの気にしたりしない。夫の欄に私が居ても気にも留めない。その程度。好きと家族になる関係は違う。

 家族になるのはその程度の些事すら無意味なもので、そんなものに気にする時点でまだまだ子供。でも、だいぶ前に進んだんだと思う。今は国が遅れていて、地方が進んでいる。やっぱり大きく変わるのはリスクがあるからと理解も出来るし、全ての日本人が同性愛じゃないから国の考えも分かる。

 けど私にはその程度。

 国とか関係なしに私は朋美の全てを受け入れるし、朋美が悲しい時はその全てを受け入れる。けど、こんな事で朋美を離す理由はない。結婚した時から朋美の全ては私のものだし、私の全ては朋美のもの。まだ、その覚悟をしきれてないなんて、朋美はまだまだ子供なんだね。

 私は寝ている朋美の顔にキスをした。

 「子供産めない程度で貴方を離すほど、私はお人好しじゃないよ。貴方は悪い女を好きになったの。そのまま覚悟して死ぬまで、死んでも私のものよ」そう言ってキスをした。

 朋美は返事とも取れない頷きをした。多分、私の声に無意識に反応したんだと思うけど、それに多分意味はない。それでも、それが嬉しかった。

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