第5話

「…わかり、ました」




頷くしかない状況だったわたしが了承の言葉を出すと、店長は本当に嬉しそうにお礼を言ってくれた。



本当は行きたくはないけど…。



その笑顔を見たわたしは、仕方なくその言葉を飲み込んだ。




「本当に助かるよ…!あまり、こういうことは無いように気をつけるからね。」




そう言ってわたしの前から立ち去った店長は、多分、こちらの気持ちも分かってくれているはず。




優しいとか、人が良いというのは、すごく得をすると思う。



店長がすごく嫌な人だったら、もしかしたらわたしも断っていたかもしれない。…いや、わたしの性格じゃどうだったかは微妙なところだけれど。



だけれど、いつも良くしてもらっている人を困らせることはあまりしたくない。出来れば、助けてあげたい。



人はそう思うものなんじゃないのだろうか。




店長の立ち去った方向に目を向けながら、一度だけなら、仕方ない…と、そう思った。

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