第4話

「ヘルプ、ですか?」



聞き慣れない言葉を繰り返すと、申し訳なさそうな態度を変わらず取る店長に「実は、」と前置きを置かれた後、事情を簡単に説明された。




先月、このファミレスの新店舗が、どうも人通りの良い場所に出来たらしく。

客入りが良くて、人手不足で困っているらしいという話だった。



ヘルプ、と言うのは、他店舗から一時的に人を借りる制度。つまり、急遽、明日、その要請がそこの店の店長から来ているのだと伝えられ。



「急だったから人見つからなくてさあ…。粋糸ちゃん、ここの仕事慣れているし…。行ってくれるとすごく助かるんだけど…」




遠慮がちな声を出す店長は、おじさんだけど真面目で優しく人柄もいいからバイトのみんなにも人気があった。



人気がある、っていうのは格好いいとかそういう事じゃなくて、文字通り人が良いからという理由。



正直、わたしは気乗りしなかった。



ヘルプ自体が嫌なわけじゃなくて、その店舗の場所があまり近づきたくない繁華街の中にあると聞いたから。




それでも、いつも良くしてもらっている店長が困ったように眉を下げているところを見ると、人からの頼みを断れないタイプのわたしは上手く断る"理由"というものを思いつかなくて…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る