第2話 消失

 このお話は、オリジナルでは有りません。

 いつ読んだか、記憶が曖昧で、高校生の頃では無かったかと思います。

 マンガで、読みました。

 作者は、池上遼一先生では無かったかと思います。

 まぁ、それを原案として、素人が書いた劣化版としてお読み頂ければ有り難いです。




 俺は、懸命にペダルを漕いでいた。滑稽な位に進みの遅い自転車を罵り乍ら。

 俺の向かう先は、中学の同級生、鴨居良主かもいよしゅあ、の家、其処には、俺の作ったこの世界の“バグ”邪魔でしか無い存在が居る。


 そうだ、鴨居良主!

 あいつが居る。

 そもそも、この世界は俺が創造した、俺が中心の世界だ。何故、この世界にあんな邪魔者が存在するのか?


 俺は、自分自身の成長、能力向上を目的に設定された負荷的存在であると考えて、その存在を許して来たのだ。

 しかし、彼奴ときたら、学校にろくにも来ない。


 なのに、成績は常に俺より上位だ。

 乗り越えなければならない障害とすれば、優秀な物だと云える。

 だから、今迄、我慢した。


 限界を超えたのは、今日の放課後の事だった。

 俺が密かに想いを寄せる女子、相坂涼音あいさかすずね、彼女が二、三人の女子に揶揄われる声を聞いた為だ。


「涼音〜、日曜日は、鴨居君とデートなんでしょ?」

「うん!彼、お家が好きな人だから、外出の約束するの大変だった」

「学校、来ないのも其の所為なの?」

「そうね、家で本読んだり、ゲームしてた方が良いって」

「成績は良いし、テストはちゃんと受けにきてるから、良いのか」

「「涼音が、淋しいだけね〜」」

「「「うふふ、ふっ、はぁはぁ〜っ」」」


 俺の中で”スイッチ“が、切れたか?

 入ったかしたらしい。

 瞬間に彼奴の処置が決まった。

 奴を排除する!

 あの”バグ“を物理的に排除する。


 俺は、家に戻り、自室の机の中から刃渡り25cmのサバイバルナイフを取り出してベルトに挿し込んだ。


 自転車に跨がり、漸く彼奴の家の玄関に辿り着いた。

 インターホンのスイッチを押し、鴨居君と呼び掛ける。


「ハイ、誰ですか?あぁ、君か!ちょっと待ってね」

 本人だ!

 俺は、ベルトからナイフを抜き腰を落とし構えた。


「どうしたの?」

 間伸びした声と共にドアが開いた。

 俺は全力で、身体ごとぶつかる様に奴の腹を刺し思いっきり抉った。


 奴は、仰向けに倒れながら呟いた。

「な、何で?....」

 奴は、ショック死に違いないと、思える程呆気なく死んだ。


 と!俺の持つナイフの刃先から、段々と形が朧になり消えて行く!

 それは、直ぐに俺自身の手を消し身体が消えて行く!

 俺は気付いた。

「この世界は、奴の物だった!”バグ“は俺だった」


 30分後。警察官の会話。

「害者は、この家のご子息で間違いないです」

「表通りに面した玄関先なのですが、目撃者の情報は有りません」

「ええ!致命傷は腹の刺し傷でしょうね、抉り込んでます」

「よっぽどの、恨みですかね?」

「凶器は見つかっていません!現在のところ」


      <了>

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