26.はんぶんこ

 丘の上の家に、女の子がひとりで住んでいました。

 お父さんとお母さんが、飛行機に乗って出かけたきり、帰ってこなかったからです。

「父さんは太陽に、母さんは月になったのよ」

と女の子は言いました。

 丘の下の家の男の子が、

「じゃあ、いつも見えるから、いいね」

と言うと、女の子は

「そうよ」

と答えました。

 それでも、女の子がとてもさみしそうだったので、男の子は毎日遊びに行きました。


 画用紙をはんぶんこ。

 クレヨンをはんぶんこ。

 ドーナツをはんぶんこ。

 映画を見るときには、ソファとポップコーンをはんぶんこ。


 それでも、女の子はいつもさみしそうでした。


 *


 ふたりは大人になり、結婚しました。

 丘の上の家で暮らします。

 おうちをはんぶんこ。

 ベッドをはんぶんこ。


 マフラーをはんぶんこ。

 だんろと毛布をはんぶんこ。


 ケーキをはんぶんこ。

 誕生日をはんぶんこ。


 草原くさはらにねころんで星を見るときには、夜空をはんぶんこ。


 よろこびも、かなしみも、はんぶんこ。

 それでも、およめさんはどこかさみしそうでした。


 *


 月日が流れ、およめさんはおばあさんになりました。

 おじいさんは、一足先に星になりました。

 おばあさんは、丘の上の家にひとりです。

 それでも、さみしそうではありませんでした。

 窓辺でゆりいすにすわって、あみものをしながら、夜空の星に話しかけました。

 おじいさん。もう少し待っててくださいよ。のんびりしてから、行きますからね。


 おしまい。

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