21~30話

21.河原の少女

 さい河原かわらは、三途さんずの川の下流にあります。

 灰色のきりの中で、たくさんの子どもたちが石づみをしています。

 親より先に死ぬことは、親不孝の罪だそうです。自分の背丈まで石をつめば、それがつぐないとなり成仏できるのです。

 幼い子どもたちは、けんめいに石をつみますが、少しつむと鬼たちが来て崩してしまいます。そのくり返しで、子どもたちは毎日泣きながら石をつまねばなりません。

 昔から、令和の今までつづく、賽の河原の光景です。


 子どもの中にひとり、変わり者の少女がいました。

 10歳くらいで、河原では年上です。

 しばらく前にここに来てから、石をつまずに、ずっとぼんやりしていましたが、ふいに上流のほうへ歩き出しました。

 1匹の鬼が気づいて、ついていきました。石をつんだら崩すためです。

 一寸先も見えない霧の中を、川にそってどんどん進みます。小さな丸い石が、大きな角ばった石に変わっていきます。

 河原の上流側に着くと、少女は、大きな四角い石を持ち上げました。

 両手でやっと持ち、よろけながら下におきます。

 しかし、つみません。

 ただ、大きな四角い石を横にならべています。つぎの石も、そのつぎの石も、そのつぎも……

 よほど楽しいのか、ニヤニヤ笑いながら。ニヤーッと笑う顔を見て、鬼はぞうっとしてしまいました。

 石をつまないと成仏できないと、鬼が何度教えても、顔も上げずにならべるばかりです。

 少女は石をならべつづけ、より上流へ向かいます。

 変わり者が石をならべて遊んでいるのだ、もうほうっておこう。鬼はあきらめて、もとの河原へ帰ってしまいました。

 鬼はそれでもときどき、少女が石をつんだかと上流を訪れましたが、いっこうにつむ様子がないので、やがてまったく訪れなくなりました。


 永い年月が流れました。

 賽の河原では、子どもたちも鬼たちも、年を取らずにそのままです。

 ある日、あの少女がふらりと下流にやってきました。

 例の鬼は、変わり者の少女がいたことを思い出しました。

 少女は子どもたちを集め、上流につれていきます。子どもたちはふしぎそうについていき、鬼たちもあとにつづきます。

 霧をぬけると、河原の石がひとつもなくなって、地面が見えていました。


 そこに、巨大なピラミッドがそびえ立っていました。


 どれほど大きいかというと、てっぺんはくもり空をつきやぶって、見えないほどです。

 みんな、目と口をまん丸くしました。

 いちばんおどろいたのは、あの鬼です。石をならべていたのではなくて、この1段目を作っていたのか……‼

 少女が子どもたちに言いました。

「ただのピラミッドじゃないよ。まん中に階段があるだろ。古代マヤ文明の神殿ピラミッドだよ。大きいから、みんなでのぼっても大丈夫。階段をのぼって、空の上の天国に行けるよ。みんなで天国に行こう」

 鬼はまたおどろきました。

「おまえ、口がきけたのか」

「うん。計算でいそがしくて、しゃべるひまがなかったけど」

「笑っていたのはなぜだ」

「完成が楽しみすぎてさ」

 子どもたちが階段をのぼって天国につく前に、この巨大な建造物を崩せるだろうか。思案する鬼のとなりに少女が立ちました。小さな少女は、大きな鬼を見上げて言いました。

「あんたたちもおいでよ。毎日、子どものつんだ石をこわしてばっかりで、つまんないだろ」

「おれたちも、行っていいのか」

「知ってるよ。あんたたちがつみ石をこわすとき、くずれた石で子どもがけがをしないように、気をつけてこわしてること」

 少女は鬼の手を取って、階段をのぼりはじめました。

 そのあとを、子どもたちがとびはねながら、そして鬼たちがおずおずとのぼっていくのでした……


 おしまい。

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