5.花束くらべ

 ある国に、王さまと若い王子さまがいました。

 王子さまが年ごろになったとき、王さまは、どんな娘と結婚したいか聞きました。

 王子さまは「心の美しい娘」と答えました。

 王さまは、国でいちばん心の美しい娘を見つけようと言いました。


 しかし、王さまはこまりました。

 心は目に見えません。どう選べばいいのでしょう。

 国でいちばん物知りの老人にたずねると、「心の美しい者は、草花を愛するものです」と答えました。

 そこで、王さまは、花束くらべをひらくことにしました。

 国の娘みなに、花束をつくってお城に集まるよう、おふれを出しました。

 いちばん美しい花束の娘を、花嫁に選ぶのです。

 年ごろの娘は、花屋や野原のはらへいって、思い思いの花を探しました。


 花束くらべの日がやってきました。

 色とりどりの花束をかかえて、国中の娘が集まりました。

 王さまと王子さまは、順番に花束を見ていきます。

 すみれ、ばら、ききょう、ゆり、りんどう……名もない野の花を抱いた娘もいます。どれもとても美しいものです。


 王さまは、またこまりました。

 どの花束も美しく、いちばんを選べません。

 王さまと王子さまは、最後の娘の前にきました。

 お城からいちばん遠い、へんぴな田舎いなかからきたその娘は、花束を持っていませんでした。

 王さまが失格にしようとするのを、王子さまが止めました。そして、どうして花束を持っていないのか聞きました。

 娘は答えました。

「おらの村にはめんこい花がうんとあるけんど……切るなんてかわいそうで、できなかっただ」

 王子さまは、この娘を選びました。

 しかし、王さまは、こんな田舎娘が姫になるのはゆるせません。

 おふれに背いた罪人として、家来けらいに、田舎娘の首をはねさせました。

 死体は、国はずれの荒れ地にある、深い谷に埋められました。そこは、罪人が埋められるので、“罪の谷”とよばれています。

 王子さまは悲しみ、毒をのんで死にました。

 自殺者もおなじく、“罪の谷”に埋められました。


 その後、荒れはてた“罪の谷”に、美しい花畑が咲いていると言った墓ほり男がありましたが、彼はいつでもよっぱらっていたので、本当かどうかはわかりません。


 おしまい。

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