4.緑の国のお姫さま
むかし、緑ゆたかな王国がありました。
王さまにはお妃さまと、小さなお姫さまがありました。
あるとき、お妃さまが死に、王さまは新しいお妃さまをもらいました。
やがて妹が生まれます。
新しいお妃さまは、自分の産んだ娘を世継ぎにしたいと思いました。
そこで、兵士長にお姫さまを殺すように命じました。
兵士長はお姫さまを森につれていきましたが、殺せず、
「お妃さまがねらっています。身分をすて、ふつうの娘として生きるのです」
と、にがしました。
そして、お妃さまには「お姫さまは森のおくの、底なし沼にしずめて殺しました」と言いました。
お妃さまは王さまに「お姫さまはあやまって、底なし沼に落ちて死にました」と言いました。
王さまは悲しみのあまり、病にたおれて死んでしまいました。
お姫さまは、暗い森を歩きつづけました。
ドレスのすそがやぶれて、くつがぼろぼろになったころ、村にたどり着きました。
子どものいない老夫婦が、お姫さまをたいせつに育ててくれました。
お姫さまは、優しく美しい娘に育ちました。
みなに親切にしたので、みなに愛されました。
しかし、こまりごとがありました。
畑がやせて、作物が育たないのです。それに、日照りがつづき、土がカラカラにかわいています。
「このままじゃ、食べ物がなくなって、みんな飢えてしまうわ。どうしたらいいのかしら」
いっぽうお妃さまは、王さま亡きあと、ぜいたくざんまいに暮らしました。
お妃さまのおしゃれと遊びのために、たくさんのお金や食べ物がむだづかいされました。
その自分勝手に怒り、大地は干上がりました。
緑のない大地には、空は雨をふらせてはくれません。
お妃さまは、山のふもとの草原に出かけました。
大地にあやまるためです。
草原は砂漠になっていました。
お妃さまがあやまっても、大地はゆるしません。
どうしたら緑をもどしてくれるのか聞くと、こう答えました。
「方法はひとつだけある。太陽が3度しずむまでに、この砂漠を、姫の生き血でうるおすがいい」
「砂漠の広さもの血を流したら、わたくしの娘は死んでしまう!」
「姫の血でなければ、王国は滅びるだろう」
お妃さまは「それだけはおゆるしください」とたのみましたが、大地はだまって、もう答えませんでした。
お妃さまは魔法使いを集めて、いろんな魔法をかけさせましたが、ききめはありません。
お妃さまは娘を抱きしめました。
「この子を死なせるもんですか!」
幼い姫が言いました。
「おかあさま、わたくしのやくめです。たみのためなら、こわくありません」
でも、小さな体はぶるぶるふるえていました。
ふたりは抱きあって泣きました。
とうとう3日目です。
砂漠のまわりには、人だかりができています。
国中から、心配して見にきたのです。
砂漠のまん中に、妹姫はひざまずき、兵士長が
人だかりから、ひとりの娘が進み出ました。
なんと、死んだはずのお姫さまです。
「わたしもこの国の姫です。わたしの血でも緑がもどるでしょう」
そう言うと、剣を取って、自らの手首を切りつけました。
血があふれました。
お姫さまの血は、澄んだ水のように、きらきらと透きとおっていました。
血をしたたらせながら、ゆっくりと砂漠を歩きます。
大地を清め、うるおすように。
砂漠中を歩き終えたとき、お姫さまはたおれて死にました。
すると砂漠から新芽が芽ぶき、もとの草原にもどりました。
草原から、山へ、町へ、緑が広がっていきます。
お妃さまは改心して、心から涙を流しました。
妹姫も、兵士長も、魔法使いたちも、見物人も、その場にいた人はみな、涙を流しました。
家に帰って、お姫さまの話をしました。
話は王国全土に広まりました。
老夫婦も、村人たちも、お姫さまと会ったことのない人々も、涙を流しました。
王国のみんなが泣きました。
涙は霧となって空へのぼり、雲をつくり、雨をふらせました。
そしてむかしどおり、いえ、むかしよりずっと、緑ゆたかな王国となりました。
おしまい。
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