3.ふとっちょガムの物語

 むかし、ガマーという男がいました。

 家ほども大きく、ウシガエルのように太っていたので、“ふとっちょガム”とよばれていました。


 村はずれの家に、年老いた父親と住んでいました。

 父親は小さくやせていましたが、息子のガムは、なみの男の3人分の背たけがありました。

 重さは、30人分ほどもありました。

 大きなおなかも、大きな口も、ウシガエルにそっくりでした。


 ガムは大きすぎて、家の外へ出られません。

 重すぎて、立つこともできません。

 家のまん中に、どっかりとすわっています。

 家はガムでいっぱいで、小さな父親は、すみっこでさらに小さくなっていました。

 ガムは山ほど食べますが、仕事のおかげで、食べ物にはこまりません。


 ガムは死刑執行人でした。

 毎朝、役人が、死刑囚をガムの家につれてきます。

 国中から集められてくるのですから、10人か11人くらいいます。

 白と黒のしまの服を着た囚人たちは、ドアの前に1列にならべられ、1人ずつ中に入ります。

 中ではガムが待ちかまえています。

 ガムの顔は天井近くにあります。その顔にじろっとにらまれると、あらくれ者でも、ヘビににらまれたカエルのようにすくみあがります。

 ガタガタふるえて、ざんげや命ごいをします。

 カエルに似たガムににらまれて、ヘビににらまれたカエルというのもおかしな話ですが、とにかくそうなってしまうのです。

 するとガムは罪人を、ぺろりとひとのみに食べてしまいます。

 罪人は胃ぶくろの中で、とかされて死んでゆくのです。

 それを、朝と昼と夕方に行うのでした。


 年に1人か2人、にらまれても平気な人がいます。

 それは罪をかぶせられた、無罪の人でした(裁判官だって、まちがえることもあります)。

 ガムのにらみは、うしろめたい人ほどきくのです。

 無罪の人はさわがないので、ガムにはすぐわかります。

 ガムは首を横にふり、役人はその人を解放します。

 これがガムの仕事です。

 給金はもらえませんが、おなかいっぱい食べられるので、ガムは満足でした。


 今日の朝も、死刑囚たちがとどけられ、ガムの仕事――あるいは食事――のはじまりです。

 1人目の囚人と、記録係の役人が入ってきました。

 にらんでも、その囚人は平気でした。

 無罪です。首をふります。

 がっかりですが、まあいいさと思いました。

 どうせつぎは食えるだろう。


 2人目が入ってきました。

 にらんでも、口をあけておどかしても、その囚人は平気でした。

 無罪です。首をふります。

 歯ぎしりしながら、まあいいさと思いました。

 つぎは食えるに決まってる。


 3人目が入ってきました。

 小柄でやせた男でした。

 にらんでも、口をあけておどかしても、べろりとなめても、男はガムを見つめ返して、背すじをのばして立っていました。

 無罪です。

 こんな日は初めてで、ガムははらぺこです。

 だから、首をふるかどうか迷いました。

 窓の外に目をやると、囚人の長い列が見えます。ガムは、まあいいさと思いました。

 まあいいさ、食ってしまおう。

 罪人しか食わない決まりだが、1人くらい、どうってことないだろう。おれははらぺこなんだ。

 ガムは、ぺろりとひとのみにしました。


 男は、のみこまれるときもなにも言わず、だまってのみこまれていきました。

 いつもとちがって囚人がしずかなので、役人は少し変だなと思いました。

 しかし、おどろいたのはそのあとです。

 ガムが男をのどにつまらせて、息ができなくなってしまったのです。

 役人も、父親も、とうのガムもぎょうてんしました。あわててはき出そうとします。

 しかし、相手ものどの中で、息ができず苦しいのでしょう。もがくので、引っかかってはき出せません。

 思えばふしぎなことでした。ガムは今までその男より、よっぽどのっぽやふとっちょを、何度もひとのみにしてきたのです。それでもつかえたことはなかったのです。

 とうとうガムは死んでしまいました。

 死んだガムの口から、するりと男の死体が出てきました。男も死んで動かなくなったので、するりとはき出されたのでしょう。


 こうしてガムは死にました。

 ふとっちょガムが死んだので、人々は、新しい死刑執行人を探さねばなりませんでした。


 おしまい。

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