第37話

彼との電話を終えて間もなく、南さんが、ランチの準備ができたと、私を迎えに来た。

 


私はアパートに帰る身支度をし、荷物をもって南さんと一緒に、南家に向かった。



「弥生ちゃん、おばちゃん、ジュース買ってくるから、中に入って待ってて」



南さんは私を1人残し、すぐ近くのコンビニに走って行った。



私は南さんの旦那さんを知らない。



だから1人で家の中に入るのが不安で、南さんを待とうと思ったが、なかなか帰って来なくて、仕方なくインターフォンを鳴らした。



「こんにちは。お世話になっている、坂口弥生と申します」



スピーカー越しに挨拶をすると、



「はいはい。鍵は開いてるから、入っておいで」



と返事が返って来た。



私が、恐る恐るドアを開けると、玄関先には、杖をついたおじさんが、私を待ち構えていた。



「弥生さん、どうぞ、どうぞ」



私はおじさんを見て、「あぁ…」と声を上げ固まった。



「私が、あつこの夫です。いつもチロルに来てくれてありがとう」



おじさんは、"チロルの家"にたまにいる、お手伝いをしている人だった。



その人が南さんの旦那さんと知り、私は驚いた。



「えーと……あの、南さんには、大変お世話になっています。今日はお招きいただきまして、ありがとうございます」



「堅苦しくしないで、今日は、いっぱいおしゃべりしましょう……ささっ、中に入って」



おじさんは、優しい笑顔で招き入れ、家の中を案内した。



南さんの家は、廊下はバリアフリーで広々し、中庭が見渡せた。




その中庭では、チロルが尻尾を振って、こっちを見ている。



太陽の日差しが差し込み、日向ぼっこが気持ちよさそうな家だった。



「マスターのお家も新しいけど、南さんのお家も新しい家の匂いがしますねぇ」



「分かるかい?先月引っ越したばかりの新居じゃ」



「へぇー、素敵ですね」



「輝の家は、いつか家族ができた時の事を考えて、2階に子供部屋が3つもある。だが予定は全くなくて、物置になってるがねぇ……ハハハ」



おじさんは高笑いをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る