昭和のツッパリが現れた!▷スキップする


「世界堂って、どうやって行けばいいんですか?」



 自分でも声が震えているのがわかった。


 高校生だから、一年生だとすれば八月末の今なら15歳の可能性が半分以上ある。自分より10歳も下回るかもしれない相手に向かって情けないとは思う。だけど、はっきり言って僕はビビっていた。




「なんだテメエ」

「ナメてんのか」


「やんのか」




 という展開を予想して倒れそうだった。なめるとは?そうだ、なめ猫っているんだよね。免許証もあったんだっけ。そうだ今日は教習所に行かなくちゃ。僕も免許とらなくちゃね。猫ちゃんだって持ってるんだもん。ああ、混乱する。やらないよ?やらない。やりません。





「―――――なんとか堂って何屋さんだ?」





 向き合った彼の髪色は派手だし指定鞄はペッタンコだが、しかし向き合ってみると目付きは恐れていたほど鋭くない。眉毛は剃りすぎて細すぎるけど歯もちゃんとある。歯に至っては白く、むしろ綺麗に並んでいる。


 何より聞き返してくれたことで僕の緊張は少しだけ軽減された。このまま一言か二言程度の会話が成り立てばいい。




「がっ画材屋さんです」

「・・・がざいや?」

「はい、Parcoの中にあるって聞いたんですけど、場所がわからなくて」

「―――――ああ、Parcoなら知ってるよ」




 彼は腕時計を見る。このことにどんな意味があるのだろう。意味があるのだろうか。




「ついてこいよ」

「へっ!」




 え、怖。



 僕シメられる?



 建物の陰には仲間がいて。



 財布にいくらくらい入ってたっけ。




「時間あるから案内してやるよ。ついてきな」






 ・・・・・マジか。本当に?




「いいんですか?」

「いいよ」




 行き方を教えてもらえるのか、知らないと言われるのか、どちらとも想像がつかなかったけれど。まさか連れて行ってくれるとは考えてもいなかった。


 このツッパリは良い人なのか?


 

 ―――――もしかしたら、と僕は思う。




「あんた年いくつだ」

「・・・えーと19歳です」



「は?年上かよ」




 中学生くらいに見えたからクリームソーダでもご馳走してくれようかと思ったのだという。なんていい人なんだろう。優しい。面倒見がいい。


 そして僕はやっぱり中学生に見えるのか、と複雑な気持ちになる。喜んでいいものか。




「俺はそこの、一本向こうの通りでバイトしてんだ。看板出てんだろ」




 見えるか、と彼が指差した先を辿ると横断歩道の向こうに看板が見えた。地下1Fとある。電気はついていないようだが猫が上で寝ている。日が当たって温かいのだろう。

 




「地下の喫茶店?」

「そう。今日は給料日だから、さっき貰いに来た帰りだったんだ」




 そうか、この時代はお給料は手渡しなのか。


 ツッパリくんは道中、僕に何処から来たのか質問して、自分は池袋に通っている高校があるのだと話してくれた。バイト先の喫茶店でクリームソーダが人気だからご馳走してくれようと思ったらしい。このツッパリは間違いなくイイ奴だ。


 僕が自動車学校に通っているのだというと彼は目を輝かせた。自分も18歳になったらすぐにでも車の免許が取りたくて、その為にアルバイトをしているのだそうだ。本当に偉い子である。





「なかなか貯まんないんだけどな。CDもテープも買いたいし、新しいウォークマンも欲しいから」

「でもバイトしてるの偉いよ」


「・・・そうか?」





 褒められた嬉しさを隠しきれない照れ笑いが可愛らしい。そしてブルーハーツが好きだと彼が言うから僕は心が躍った。三ヶ月以内にリリースされる新曲はマジでカミっている。僕は思わず熱弁を奮ってしまう。



 僕が過去へ来たことでCDの発売予定が変わるなんてことはないと思うものの、具体的な時期や内容ははっきりとは言えなかった。でも気に入った楽曲の発売時期は調べてきたから―――――状況が変わらなければ、間違いない。物凄く人気の出るドラマの主題歌になるんだそうだ。ドラマそっちも楽しみだった。




「かみ・・ってる・・・?」

「あー、神がかり的ってこと」

「神がかり・・・てき?」



「すごいんだよ、とにかく」

「おお、そうか!楽しみだな」





 ツッパリくんはまた目を輝かせた。よく見たらかわいい目をしている。

 捉えようによっては僕を業界関係者と誤解させてしまったかもしれないが、そこは構うまい、もう彼と会うことは無いだろう。そんなことを話しているうちに目的の建物へ着いた。




 もしかしたら―――――



 もしかしたら彼は、この後に事故に遭うとか事件に巻き込まれるはずだったのではないか。僕は勝手な想像に想いを馳せる。善人だから救済を用意されたのではないか。だって彼はいい奴だ、ギャップを差し引いても。


 もしも僕が彼を難から救えるのならば本当に嬉しい。

 よかった、過去へ来てよかった。胸が熱くなるのを抑えきれないでいる。スキップしたい気持ちだった。







 



















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 “あのスレ”に居合わせた彼らを繋ぐ合言葉をひっそり募集します。チーム名みたいになると嬉しいですが、そうでなくても何でも結構ですので、ダサいのください。後半の大事な場面クライマックスで登場させたいので思い付いた方はコメント欄にご記入いただければ幸いです。


 応募作は全て作中で登場させていただきますが、一番ダサいことを言った方が優勝です。



 






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