その夕方の凶行


 以下がマユルくんから聞いた話だ。主にPhloxの調査に基づいている。



9月26日 月曜日 雨


 朝から雨が降っていて、11月並みの寒さだったという。




*****   *****   *****   ***




17:27 (警察の調書には17:30頃と記されている)


 真理子さんは雨の降る中、少しだけ残務処理をしてから職場を出て個人的に契約している月極駐車場へ向かっていた。行員専用の駐車場は確保されていないそうだった。彼女の車が置かれているのは奇しくも桜坂と程近い、勾配の麓に位置する駐車場だった。橋を渡って少しだけ歩いて公園を越えたすぐ先にある。


 雨雲に覆われたこの日は温度が一日中上がらなくて、屋外を歩く者は総じて厚着をして傘をさしていた。早瀬千聖が彼女を待ち構えていたのは公園を通り過ぎた歩道だった。鬱蒼と木々が茂る小路の人通りは多くない。雨の日や夕方は特に―――――


 車で通勤していると彼女は早瀬に話したことがあった。徒歩で追跡されるのを避ける目的があってのことだ。彼女の危機管理に落ち度などない、筈だった。


 すれ違いざまに声をかけられて立ち止まってから、相手が早瀬であることに彼女は気が付いた。雨が降っていなければ―――――もしもお互い傘をしていなければ遠目に気がついて引き返すことができたかもしれない。


 早瀬は真理子さんに「話がしたい」と持ち掛けた。「雨が降っているから車に乗せてほしい」「そこで話がしたい」と。彼女は駐車場の場所や車のナンバーを知られてはいけないと思った。その一瞬の思考が、―――それを早瀬が狙ったとは思えないが彼女に隙を作った。次の瞬間に早瀬がフルスイングで振り抜いた閉じた傘は真理子さんの横っ面を激しく殴打した。転倒した彼女に馬乗りになった早瀬・・・瀬尾東吉郎はその白い首に手をかける。




(殺意があったのかはわからない。)

(うん。)



 恥をかかされたと逆恨みをしたことによる復讐のつもりか、あるいは脅しのつもりだったのかもしれない。待ち伏せはしたのではなくされたことにして、相手はランチ代を借りている女性ではなく。因縁をつけてきた複数人の屈強な男でも倒したことにして何処かで語られるのかもしれない。そうして瀬尾東吉郎の在りもしない武勇伝に加えられるのかもしれなかった。すべて想像だが、そういうことをする人間だ。



17:48


 辺りには街灯も少なく、その日はいつもより更に暗くなるのが早かった。


 現場である路上には彼女が倒れていて、近くには盗難されたと見られる有名ブランドの傘が落ちていた。傘は凶器となったそれ一本しか残されておらず、犯人は真理子さんの傘をさして逃亡したものと思われた。第一発見者は同じ駐車場を借りている看護婦で、勤め先の保健センターに駆け戻り通報した。


 目撃者は無く被害に遭った女性が錯乱状態だったこともあり―――――信憑性に欠けるなどの理由で被疑者を速やかに特定することはできなかった。気が動転したせいか真理子さんが瀬尾東吉郎という名前を即座に思い出せなかったことも理由の一つだ。


 二日後には、この日の雨により増水した水路の側溝に由美子さんが落ちる事故が起きる。真理子さんの件でAvantiへ聞き込みが入るのは一週間近く経ってからだ。入院した彼女は比較的すぐに正気を取り戻したが熱を出していた。それが下がるまでにも時間を要した。


 捜査に動きがあったのは、役所内で働く職員ではない二人の女性が被害者であるという共通点に気が付いてから。その頃に、今度はいよいよ島野さんの事件が起きてしまう。立て続けに起こる負の連鎖を考えると捜査陣を責める気にはなれなかった。












  

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 “あのスレ”に居合わせた彼らを繋ぐ合言葉をひっそり募集します。チーム名みたいになると嬉しいですが、そうでなくても何でも結構ですので、ダサいのください。後半の大事な場面(クライマックス)で登場させたいので思い付いた方はコメント欄にご記入いただければ幸いです。


 ご応募いただいた作品は全て作中で登場させていただきますが、一番ダサいことを言った方が優勝です。



 ダサ1-climax


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