have a break

「ええと、私からの手紙を読んで島野に確認してみたことが一点あったんです」



 戻ってきた小谷青年が席に着きながら言った。


 島野さんへの電話はお母さんが出てくれて、終業時刻にお店へ行くという旨の伝言を託ってくれたそうだ。この一手間を怠れば後々がとても面倒くさくなることを未来人は知っているのだろうか、それともとっくに忘れてしまったのだろうか。僕は知らなかった。未だ経験はせずに済んでいるけれど、いつか起こるであろう事態に怯えながら身につまされているところだ。



 例えば、と僕は思い出す。「おまえら」が教えてくれた、貴重な経験を基に説明してもらった話を。



[人と会う時は必ずアポを取れ]

[取れないなら会うな]



 携帯電話の黎明期において待ち合わせた片方が携帯電話を所有していて、もう片方がしていなかった場合。以下は稀有なケースかと思われるが、所有していない側の人間が時間にルーズであった場合。いくら待っても現れないので不安になり、待ち合わせ場所の確認をしたいと思い自宅に電話してみる。相手は徒歩だから、まだ家を出ていないかもしれない。




[携帯電話って便利だなって思ったんだわ]



 すると相手は家を出た後で、連絡が取れなくなっていた。ということがあったらしい。「おまえら」の身に起きた出来事だ。


 その相手は靴下も履かないまま通気性の悪い靴を履き道中は気ままに草花を愛でながら歩き、待ち合わせに遅れるとしても実際に遅れたとしても決して悪びれることはなかった。



[靴下は履けよ]

[相手も慌ててないと嫌だな]

[くさそう]

[アポもそうだけど人間性の問題]

[相手は徒歩で来れる距離っていうのもモヤモヤする]

[どっちが誘ったの?]

[せめて悪びれろよ…]




 待たされる側のそのヤキモキする時間を想像したら、もう。時間でもお金でもルーズな―――――人に迷惑がかかると想像もできない類の人間が苦手だった。迷惑がかかっても構わないというような部類なら更に。


 待ち合わせ場所も曖昧にしてはならないという教訓は得たが何度思い出しても、ダメだ、考えただけで吐き気がしてくる。




*****   *****   *****   ***




「島野はその男の――――かどうか今は断言できませんが、素性は知らないそうです。でも一度だけ彼女にしつこく話しかけている現場に出くわしたことがあって、止めに入ったらしいんです」



 それがきっかけとなって由美子さんは付き纏われて困っている事実を島野さんに打ち明けることになった。物語の運びとしては素晴らしい、それは大きな前進だ。おまけに二人の仲を縮めたに違いない、というのは心の中にしまっておこう。



「今日お話を伺ってわかりました。その時に島野から聞いた男の特徴が、お二人の見た人物と一致している―――気がするんです」



 そう言った後で「私、まるで刑事デカみたいですね」と照れ笑いする小谷さんが微笑ましい。



「先ほどの考察について島野に話しても問題ないでしょうか?」



 由樹さんが僕の方を見るので首を縦に振った。この件に関しては由樹軍師に委ねるつもりだった。どんな采配を下したとしてもおかしなことにはなるまい。僕はやっぱり彼を信頼している。



「はい、是非お話しください」

「ありがとうございます。ただ、注意して以降、島野は男の姿を見ていないということだったんですよね。えーと、ちょっとお待ちください」



「いつくらいからのことなんでしょう?付き纏い始めたの」


 

 小谷青年が手帳をめくる間、僕も場を繋ぐのに口を挟んでみる。由樹さんの目撃頻度から考えて遅くとも今月の初めには出現していたのではないか。まあこれは僕の素朴な疑問に過ぎないので特定する必要はないだろう。だから時期のことは一旦置いておいて。


 その後に姿を見せていないとすれば、島野さんにまた注意されたらと警戒している可能性が高そうだ。小谷次長はこの話してたっけ?それにしても臆病なくせにキレやすいなんて厄介な奴だ。いっそ付き纏うのをやめないものだろうか。



「えてして、そういうものなんだと思います。自分よりも非力な相手を選んで強く出る」



 悪質な集団における末端の気質である、斯くうちの軍師曰く。



「而してその男はの軍師には合わせる顔がありません。彼女は自分よりも強かった。うっかり会ってしまったら」

「返り討ちに遭う?」

「恥の上塗り?」


「はい、どちらにもなりますね。または先手を撃たれるのを恐れているか。お金返してと名指しのもと大きな声で言われるかもしれない、そうすれば警戒されてこの周辺では金銭を無心したり食事に誘う相手を探すことは難しくなります」



 

 *****   *****   *****   ***




 十五時になるところでマスターに営業時間のことを確認をした。飲食店はランチとディナーの間に準備時間を設ける場合があると考えたからだ。そうであった場合いつまでも居座っていては迷惑になる。



「あー、大丈夫。大丈夫。」



 マスターは日に焼けた大きな手をひらひらと振った。やっぱりいい匂いがする。

open11:30~close22:00と決めていて、昼前に店を開けたらお客さんがいてもいなくても閉めたりはせず時間がくれば夜の営業になるのだそうだ。


 それを聞いて僕たちはケーキを注文した。僕はホットケーキにした。バターが載っていて、蜂蜜が入っているらしき小さなポットも添えられている。こういうのでいいんだよ。強面のマスターが焼いてくれたホットケーキはシンプルでとても美味しかった。















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 “あのスレ”に居合わせた彼らを繋ぐ合言葉をひっそり募集します。チーム名みたいになると嬉しいですが、そうでなくても何でも結構ですので、ダサいのください。後半の大事な場面クライマックスで登場させたいので思い付いた方はコメント欄にご記入いただければ幸いです。


 ご応募いただいた作品は全て作中で登場させていただきますが、一番ダサいことを言った方が優勝です。



 




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