星の守り人 66話 新たな名前

 コア。アームズやキャリアーなど、武装を除くほぼ全ての装備に搭載されている動力源兼メインコンピューター、動かすためのエネルギーだけで無く、エネルギー弾を放つ武装への供給や、AIであるサテラもこの中に組み込まれており、そのテクノロジーは星守の中でもごく一部の人しか知らない謎の存在。


 コアが生み出すエネルギーは絶大で他の物では代替できない、どうしてここまで大出力のコアが必要になってしまったかには、この宇宙における兵器競争が背景にあった。意外に思われるかもしれないが、兵器開発の進歩は攻撃面より防御面の方が進んでおり、とにかく固く頑丈な装甲で身を固めたコロナイザーが多く現れるようになった。無人機なので搭乗者を保護する必要も無く、攻め込む側なので自分さえ壊されなければ良いということでこのような進化を果たした。それに対して守る側の星守はその強固な装甲を貫通するだけの攻撃力を得る必要があり、それだけのエネルギーを生み出すためにこのコアが生み出され今日まで使われている。

 そして高い防御力に対応する為、どの文明も攻撃武器も徐々に威力が増していった結果、いわゆるバリアのようなものでは防ぎきれず防御は専ら強固な装甲で受けきるのが常識となっていた。


「_キャリアー?_」

「_あぁ、キャリアーの広域シールドを使う_」

「_そんなものがあったんですか??_」


 強固な装甲で攻撃を受けきるだけでは大勢の人を守る事は出来ない。そこで星守は更に高出力のコアを作り上げキャリアーに搭載、一時的ではあるがコロナイザーの攻撃にも耐えうる強力なエネルギーシールドを広い範囲に展開することが出来るようになっている。それでも範囲は直径200m~300m、6機しかないキャリアーで守れる範囲には限りがある。だが今回のように狙う場所が分かっていればこの広域シールドは強い武器になる。


「_今までの戦術ではあまり有用では無かったし、キャリアーの動きにまで気を配るのは大変だからね_」

「_なるほど、でも確かにそれなら行けるかもしれないですね!_」


 キャリアーを操縦できるのはアームズの操縦権限を持っている人のみ、つまり地球上ではT.U.N.E.Dのアームズ部隊の18人だけ、もちろん彼らはコロナイザーと戦っているのでサテラに指示を出して自動操縦で動かすしかないのだが、戦いながらそこまでやるのは難しい事ではあるので必要が無いならやらないに越したことは無い。


「_今の君達の実力ならキャリアーの広域シールドを戦術に組み込んでも立ち回れるだろう_」

「_では早速訓練ですね!_」


 若干マンネリ化していた今までの訓練とは違う新しい訓練が出来ると知り目を輝かせる数人のメンバー、その期待に応えるため早速その日からキャリアーを用いた訓練が開始、主にキャリアーに指示を出すのはコロナイザーからある程度離れてキャリアーの近くに居ることが可能なエクステンドレンジシューターを所持するスナイパー達となった。


 *


 数日後、今日も世間はT.U.N.E.Dの事で賑わっていた。各国の政府関係者や権力者からはT.U.N.E.Dが先日出した被害に対して否定的な意見もあったが、一般の方々からは意外と否定的な意見は少なく未だヒーロー扱いが続いていた。

 日本でも名古屋ドームという大きな施設が破壊されたことでバッシングが少なからず起きるかに思われたが、とある少女の話題がそれをかき消した。その少女とは折原が助けたアイドルグループ、スターダムプロジェクトのメンバーの1人である霧島未来。被害にあった名古屋ドームでライブをしていた出演者としてグループ全員が各メディアにインタビューを受けることになったのだが、その中でも崩落するドームに1人残された霧島をT.U.N.E.Dが助けたという話は話題性もあり、所々脚色を加えながら美談として日本中に拡散された。


「ーーそこで1人ステージ上で逃げ遅れた私に空からコロナイザーの破片がー」


 特に落ちてくるコロナイザーの残骸からギリギリのタイミングで折原が救助したシーンはまるで物語の中の世界の様で人々の関心を集め、更にそれがあの白き英雄だという噂が広がり盛り上がりを見せた。そしてそのインタビュー映像の中で霧島が言った一言が、折原達に新たな名前を与えることになる。


「私を抱えて飛ぶその姿はまるでおとぎ話の騎士のようで、あの方が居なければ今私はここに居なかったと思います。なのでこの場を借りて改めてありがとうを伝えたいです…その、白銀の騎士に」


 T.U.N.E.Dという覚えづらい名前はイマイチ浸透していなかったが、この言葉がきっかけとなり白銀の騎士という愛称が定着、霧島を救ったのが折原と特定された訳ではなかったので、結果アームズ部隊全員の事が白銀の騎士と呼ばれるようになった。


 *


「よっ!白銀の騎士様?」

「やめてくれ…」


 霧島のインタビュー報道の翌日、電話で安否確認は出来ていたが実際会って元気な姿を見たいと思った折原は、訓練終了後になんとか予定を合わせ山内のもとを訪れていた。


「…無事だったんだよな?」

「無事なもんか!念願のライブだぞ?チケットは払い戻されたけど、次は何時になることやら…」

「まさかライブ会場を狙うとは思わなかったよ」

「だよなぁ…にしてもあの時の空から突っ込んできたのが折原だったとは驚きだよ」


 避難中でドーム内にまだ取り残されていた山内はコロナイザーが天井を破壊したのも、その後残骸と一緒に折原が突入して来たのもその目で見ていた。流石に距離があって霧島の姿は見えていなかったので報道を見て知ったようだ。


「それで…可愛かったか?未来ちゃん」

「気になるところはそこかよ…でもそうだね、流石はアイドルって感じだったよ」

「っかー!良いなぁ!」


 ファンとして気になるところは救出劇の詳細より霧島を抱えて飛んだ、という点だったらしい。


「推しになったか?ライブは無いけど握手会ならある、行くか?」

「うーん…」


 いつも通り断る流れだな。と思った折原だったが、助けた時に霧島が言った言葉を思い出した。


 …壊れていくのを…見ていました


 あれは一体どういう意味だったのだろうか?インタビューでは霧島があの場所に居た理由までは明かされていない、何故あそこに居たのか、何故逃げずに崩落するステージを眺めていたのか、折原はそれがどうしても気になっていた。


「…行こうかな」

「マジで!?」


 次の機会があったら行くって山内と約束していたし、良いタイミングだろう。日程を確認したところ丁度訓練が休みの日と重なったので行く事にした。


「おっけー!握手券は俺のを分けてやるよ!」

「それくらい自分で買うよ」

「良いって良いって、だって折原バイトとか出来てないだろ?俺が奢ってやるよ!」

「そうか?悪いな」


 そういえば俺、給料とか貰ってなくないか?他のメンバーは所属している所から給料を貰っているけど、俺は仮で自衛軍所属扱いになっているだけで中身は休学中の大学生。

 もしかして俺ってタダ働き…?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る