星の守り人 67話 順調そのもの?
全世界で3箇所同時進行から1週間、日本の一部では梅雨明けが宣言され本格的な夏に突入し始めた6月末、キャリアーの広域シールドを用いた戦い方が最低限形になった頃、T.U.N.E.D結成から3度目となるコロナイザーが襲来した。
「_司令室よりイギリスチームへ、降下ポイントはノルウェー沖1500km地点!_」
「_こちらルーク。了解、イギリスチーム出撃します!_」
臨時司令室からの情報を受け、ルーク率いるイギリスチームが極寒の海へと出発、今回は同時攻撃では無く1箇所のみ。
「_オルカだ、コロナイザーの数は3機、陸からの距離もあるし今回はイギリスチームだけで対応してみてくれ、バックアップとしてアメリカチームが近くで待機しててくれている_」
「「「_了解!_」」」
今後の事を考えるとこの程度の規模のコロナイザーなら1チームで対処出来なければ話にならない。人命を考えれば実戦で練習みたいな事はやるべきでは無いが、多少無理してでも今は各チームに実力をつけさせるのが優先、万全の準備をしつつイギリスチーム単独での撃破を目指す。
「_兄さん、ノア、敵は固まったままこっちに来てるみたい_」
レーダーユニットで索敵距離の上がったフィンがいち早くコロナイザーの詳細な隊列を把握しチーム内に共有する。
「_了解。3機か、各個撃破で行くか?_」
「_…いや、1機を集中攻撃しよう_」
「_行けるのか?_」
「_俺達の速度なら行ける、とりあえずウィングブースターは温存で!_」
状況を素早く把握して作戦を立てたフィン。このまま行けば接敵ポイントは陸からの1200km地点、安全を考慮して陸から200km以上近づかせないようにしたとしても1000kmの猶予がある、アームズの元々の速力とウィングブースターによる加速があれば1回見逃したたとして、5分以内であれば追いつく事ができる。
「_5分以内に行動パターン収集が完了しなかったら俺とノアは見逃した2機を追いかける_」
「_OK、俺達なら出来る。行くぞ!_」
3人で1機のコロナイザーを狙う、単純に行動パターン収集の速度が3倍になるという事はないが、それでも1人でやるよりは格段に早くなる。
作戦が固まった3人は並んで飛んでくる3機のコロナイザーの内、右側の1機を標的に定め突撃。想像通り自分が狙われていないと分かったら残り2機はフィン達の横を素通りして陸地へ一直線に向かう。
「ふぅん、2回目の実戦でこの大胆な作戦、さっすがフィンだね!」
宇宙からモニター越しに状況を見ていたリオが拍手をしながらその戦いを見守っている。リオが見込んだ通りフィンの作戦立案能力は高い、特別訓練以降もその実力をメキメキ伸ばしている。もう既に戦術に関しては折原を凌ぐ力を持っているかもしれない、最も折原は戦術で遅れを取ったとしてもその戦闘力の高さで軽く覆してしまうのだが…
その後の戦いはフィンの作戦通りに事が進み、接敵から4分程度で追尾プログラムが完成、フィンがそのままプログラムを実行し撃墜、ルークとノアが残りの2機を追いかけこちらも撃墜。降下ポイントが陸から遠く離れていたと言う事もあるが、初めて危なげも無くコロナイザーを撃退する事に成功した。
T.U.N.E.D勝利!イギリスチームの活躍でまたも死者ゼロ
6月に入り3度行われたコロナイザーによる侵攻、そのどれも死者を出す事なく防衛に成功したことで世間の評価は爆上がり、T.U.N.E.Dに対するヒーロームードは更に拍車がかかり、各地で有志によるファンクラブの様なものまで作られる事態となった。戦いの詳細までは共有されていない為T.U.N.E.D全員が高い戦闘力を持っているという認識が広まり、この頃には白き英雄こと折原だけを英雄視する者はほとんど居なくなった。
世間の評価とイギリスチームが単独でコロナイザーを撃退した事で火がついた一同は一層訓練に身が入り、更に実力をつけていった。
それから7月に入り2度の侵攻があったが、そのどちらも大きな被害を出すことなく防衛成功、キャリアーによる広域シールド作戦も正常に機能し、T.U.N.E.Dは無敗の軍団と化していた。…ただしこれはまだ序章に過ぎず、コロナイザー側としても今はまだ様子見の段階で全く本気を出していないということを忘れてはいけない。
*
「俺、SNSとか始めちゃおっかな?」
「…なんで?」
「だって今や俺らは超有名なヒーローだぜ?フォロワー100万人とか言っちゃったりして?」
「何投稿するんだよ…頼むから機密事項漏洩とかやめてくれよ…」
「そうかぁ…じゃあ白銀の騎士の日常とか?」
「訓練と基地の往復の毎日をか?興味無いだろ」
「おぉん…」
西野は相も変わらず呑気である、T.U.N.E.Dが有名になっていく一方、登場者個人の情報は公になっていないので承認欲求が目覚めてしまったのだろう。訓練の合間の休憩中、アームズから降り夏に日差しを眩しそうに手で遮りながら司馬が冷静にツッコミを入れる。
「俺達は認められる為に戦ってるわけじゃないんだぞ、それにいつもっと強い敵が来るかわからないんだ、余裕でいる暇は無いぞ」
「分かってるけどさぁ…俺もチヤホヤされたい!」
「戦いが全て終わったら好きなだけチヤホヤされに行っていいから、さっさと訓練行くぞ」
「ん、そうか?なら頑張ろう!」
単純な奴、西野達の会話を後ろで聞いていた折原は横槍を入れたあと心の中でそう呟く。単細胞で脳筋野郎の西野だが、それ故と言うべきか戦術抜きのコロナイザーとのタイマンが意外と強く、そういう点では頼りになるんだけどな…
「それにしても…もう夏か、結成してから2回目、今年こそは夏らしい事したいぜ」
「去年は訓練始めたてでそれどころじゃ無かったしなー」
「…海でも行くか?」
「いいね、折原は?次の休暇とかどうよ?」
「次の休暇…予定入ってるな」
「なんだよ、俺達を差し置いて優先する予定って」
「…握手会」
「「は?」」
「先月助けたアイドルグループの…」
「まじかよ!まさかお前、それを口実にお近づきになろうとしてるのか…?」
「そんなんじゃないよ…友達に誘われてさ」
「本当か…?まぁそう言うことにしてやろう」
ニヤニヤしながら折原を見る司馬と西野、春か?夏に春が来たか?とか言いながらおちょくって来る。言わなきゃよかった…
星の守り人 〜白銀の騎士の物語〜 祐弥 @uoushin
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