星の守り人 65話 次に備えて

 

「サテラ!あの子を救助する、衝撃保護を!」

「[了解しました。救助モードに切り替えます]」


 コロナイザーの残骸が降ってきているので悠長に止まって助けている暇は無い、かと言って今のスピードのまま行ってしまえば救助じゃなくてタックルになってしまう。折原はサテラに指示を出し、エネルギーシールドを応用した衝撃を緩和する力場をアームズ前方に展開、ややスピードを緩めて救助対象を両腕で抱えてその場を離れる。

 …でも第一優先で避難しているはずの出演者が何故こんなところに?折原はアームズの音声を通信から外部スピーカーに切り替え、救助した少女に喋りかける。


「こんなところで何してるんだ!」

「……?」


 自分の両腕に抱えられた少女は、恐怖からか目を閉じて固まっている。折原の声が届いたのか、ゆっくりと目を開けると自分の置かれている状況がわからずキョトンとしている、そして数秒の沈黙の後小さな声で何かを言っている、アームズの集音レベルを上げて耳を傾ける折原。


「…壊れていくのを、見ていました」

「え…?」


 壊れる?この子は一体何を言っているんだ。折原は周囲を見渡す、確かに天井の崩落であちこち壊れたライブ会場がそこにはあったが、これを見ていたのか?こんな危険な状況で…それにこんなもの出演者であるこの子達が一番見たく無いものじゃないのか…?


「…まぁいい、このままドームの外に出るが構わないか?」

「はい…お願いします…」


 少女はさっきから折原の顔をじっと見つめている。顔といっても正確にはアームズの頭部分を見ている、緊急事態だったので特に意識していなかったけど、こうして改めてみてみると整った顔立ちをしている美少女だ、煌びやかな衣装も相まって現実離れした可愛さ、これなら多くのファンがいるのも頷ける。そんな美少女の視線を一身に受けているのでなんだか緊張してきた。


「あそこでいいのか?」

「はい、お願いします」


 少女を抱えたままドームの周囲をぐるっと回っていると、数十人の人だかりに囲まれた煌びやかな衣装の集団がいたので、抱えている少女に確認してもらいその目がけて降下していく、それにしてもこの高度で飛びながら冷静に下を見る余裕があるとは、なかなか肝の座った少女だ。


「ありがとうございます!!」


 少女を降ろすとすごい勢いでスタッフらしき人が駆け寄ってきた、そりゃまぁ心配だろうな。スタッフに少し遅れてメンバーらしき他の少女も集まって来た、5人揃うと更に芸能人オーラが凄い。そしてそこで初めて山内がプレゼンしてくれた朧げな記憶と繋がり、この子達があのアイドルグループなんだという実感が沸いた。


「後は避難指示に従ってください。それではー」


 ドームの周りを飛んでいた姿は多くの観客に見られている、このままここに居ると人が集まってきてしまう可能性があるので早々に立ち去ろうとする折原を、先ほど助けた少女が引き留める。


「待って!」

「?」

「えっと…ありがとうございました」

「これが俺のするべきことですから」

「…名前」

「はい?」

「名前を教えてください…」


 一度スタッフに連れられて折原の元を離れた少女が再度こちらに駆け寄ってきた。名前なんて聞いてどうするのだろう、まさか勝手に体に触れたとかで訴えられたりしないよな…?いや、アームズを介してるしセーフだろ。って、この子がそんなことしそうには見えない、普通に自分を助けてくれた人の名前が知りたいだけか。


「…折原健人」


 名前だけ簡潔に告げると折原はスラスターを点火し離陸、通信を復帰させ任務完了の旨を報告しつつ進路を入間基地へ取る。


「_こちら折原。任務完了、帰還します_」

「_折原!お疲れ様、今のところ死者重傷者の情報は入ってきていない。よくやってくれた!_」

「_司馬と西野は?_」

「_こっちも撃墜完了、折原…本当にありがとう_」

「_俺の方もバッチリよ!_」


 どうやら残りの2機も無事撃墜出来ているようだ、撃墜した残骸が落ちた場所の被害が気になるところだが、立花からの報告を聞く限りでも大きな被害は出ていない様子。とにかくこの状況、都市の直上からコロナイザーがやってくるという難しい場面で死者を出さずに済んで本当に良かった。折原は途中で司馬と西野が先に乗っていたキャリアーに合流し基地へ帰って行った。


 *


 翌日。入間基地の臨時司令室にて、メインモニターが6分割され他5チームT.U.N.E.Dの臨時司令室の映像とオルカ達が乗るキャリアーのデッキの映像が映し出されている。昨日の同時攻撃を受けて今後の戦い方を決める作戦会議。ただその空気は開始早々重いものになっていた…


「_どこも金銭的被害が甚大ですね…_」

「_その他にも現在の防衛力が十分なのかという疑問の声も出てしまっていますわ_」


 どのポイントも奇跡的に死者はゼロ、先に交戦を開始していた日本チームが早い段階で追尾プログラムを完成させていたおかげで、遅れて飛来してきた残りの2か所は侵攻を食い止める時間が短くて済み、コロナイザーが地上で暴れ回る前に撃墜することが出来た。

 だが日本同様に何発かの攻撃を許してしまい、日本はドームの天井、残りの箇所も大きな施設に甚大な被害をもたらし、復旧にはかなりのお金と時間を要する結果となってしまった。被害をゼロに抑えることが出来た初戦に比べると死者は無くても被害は大きく、今のT.U.N.E.Dの戦力に対して疑問の声が上がり始めてしまっていた。


「_んー、あの状況でみんなよくやってくれたと思ってるんだけどなー_」

「_内情を知らない世間にとっては結果が全てですからね…_」


 対コロナイザーの戦い方の難しさを知っている関係者からすれば十分な成果だとしても、知らない人達からすれば守り切れなかったという事実だけが出来る。分かっていても必死に戦った結果が否定的な意見だとやるせない気持ちになる。


「_でも、今回は収穫もあったねー_」

「_収穫?_」

「_え、僕言ったじゃん。あいつらが狙う場所の特徴だよ_」

「_あ…_」


 今回コロナイザーが襲撃したのは全て大勢の人間が集まる場所、コロナイザーは侵略の邪魔になる地球上の重要施設を先に攻撃するのがセオリー、まず最初に防衛施設であるロングアイランド基地を攻撃、そこで地球上の軍事力は脅威にならないと判断したコロナイザーは、2回目ランダムにアメリカ沿岸部を攻撃、人が多くいる街に向かうほどT.U.N.E.Dが必死に止めようとするのを見て人が多く集まる場所を重要施設と仮定、優先的に攻撃するように設定されている様だ。


「_となると今後は益々大変になりますね…_」


 人が多くいればいるほど守るのは難しくなる。避難だって時間がかかるし、今回みたいに直接その地点を狙われてしまうのが続くのであればいつまでも守り切るのは難しい。


「_ううん、これは好機だよ!狙いが分かってるなら待ち伏せられるからね!_」

「_だけど守る人が増える事には変わりないのでは…?_」

「_ピンポイントで場所が分かれば方法はある!ってなわけでオルカよろしくー!_」


 そういうと隣に居たオルカの背中をパンっと叩くリオ、オルカはやれやれといった表情で頭を掻きながらその方法についての説明を始める。内容としては、今までの戦い方はコロナイザーの目的が明確でない時の対応方法で、とにかく飛来するポイントの人間を避難させ戦いの場を整え思う存分戦うというものだったのだが、人口密集地点を攻撃すると分かればそこを重点的に守る、つまりあえて避難をさせずにコロナイザーの動きを読みやすくして迎撃するという戦い方が取れるようになる。


「_それって…民間人の囮にするってことですか!?_」

「_うむ…そう捉えられてしまっても仕方ないが、この方法が一番確実なんだ、実際星守もこの戦術はよく使うんだ_」

「_それは人員が足りてる時ですよね?今のメンバーでは…_」


 装備を見て貰えばわかる通り、アームズの防衛力は意外と低い。自分自身を守る力は圧倒的だが他者を守るように作られておらず、やられる前に倒すというコンセプトのもと作られているので、今回のように防衛拠点を守るような戦い方をするにはかなりの人数のアームズ部隊が必要になる。


「_うん、だから今後はこいつにも活躍してもらおうと思ってね_」


 オルカがそう言うと画面にキャリアーを映し出した。輸送機であるキャリアーを?一同はキョトンとした表情で画面を見たまま固まっている。

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