第43話

英依が拉致られたと聞いて、真っ先に体が動いた。

ハンドルを握る手に力が籠った。

他人のことであそこまで焦ったことはない。



『ねえ英依、』



英依の手を取ると英依は目を見開いたまま硬直したが、その手を自分の胸──心臓まで持ってきて自分の手をその上に乗せた。



『英依を見ていると心臓が痛い。息苦しいんだが、何故だろうか。』



「っ!!!そ、そんなのしっ知らねぇよ!!離せ!!」



「うわード直球じゃん!ウケる!」



『和巳が英依に会えば解決すると言っていたが、教えてほしい……。』



もやもやするこの感じを早く払拭したい。

涙目で耳まで真っ赤にした英依は、私の手を払うと距離を取って上目遣いに睨んできた。



「た、助けてくれたのは感謝してるけど!調子乗んなよっ!」



『いつも通りのつもりだけど。』



「まあな。」



「カズはなんでそいつの味方なんだよ!」



「どっちの味方とかじゃないってばー。二人とも応援してるぜ。」



『怒った英依も可愛いなあ。泣かせたくなる。』



「いつも通りじゃん。」



「っ!!ばかあ!!」



そしてまた、今日も堪えきれなくなった英依が教室を飛び出して1日が始まるのだ。






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