第31話
なんでだろう……?
自分でも分からない。
人が嫌がることをして嗤っている女に腹は立つし悔しいのに、アイツの吐く端から聞いたら甘い戯言に嫌悪感はあっても不快感は感じない。
『俺……マゾじゃない!』
「お、おお。」
『あんな奴……嫌いだっ!』
「……無理に嫌いになることないぞ?すぐ仲良くなるなんて無理でも、少しずつでいいんだからな。」
『仲良くなりたくない!』
────「アンタなんか、いらないのよ。」
かつて母親だった女が俺を捨てた時に放った言葉が脳裏に響く。
その時から、かつて父親だった男に毎日のように「女は信用できない」「お前は俺と同じ、生涯女に裏切られて一人で死んでいく」と言われ続けた。
母に愛されなかった父。
母に愛されなかった俺。
初めて好きになった少女は「ごめん、だってあたし來禅くんみたいな格好いい彼氏が良いの。英依くんあたしより可愛いから嫌だ。それに……」と言った。
その後、「それに……」に続いて言われた決定的な言葉は、以前彼女が言ってくれたこととは真逆の言葉だった。
父だった男が言っていたことは正しかった。
─────“女は平気で嘘を吐く。”
愛した女に裏切られた父。
初恋の少女に裏切られた俺。
本当だ。父の言った通りだった。
俺はこの先も、俺を本当に愛してくれる人に会うことは出来ないのだと。
─────「英依がほしい。」
あの女も同じ。
俺の過去を知ったら、あの女も初恋の少女と同じ蔑む目で俺を一瞥して踏み潰すのだろう。
もう傷付くのは嫌だ。怖い。
幼馴染みの彼等と兄ちゃんだけが、俺の過去を知っても側にいてくれた。
彼等と兄ちゃんだけいてくれれば俺はそれでいいんだ。
「英依……震えてるぞ。」
『ん、大丈夫。ちょっと寝てってもいい?午後は戻るから……。』
「ああ。」
心配してくれる兄ちゃんに甘えてベッドに横になると、温かい兄ちゃんの手が頭を撫でてくれてすんなり寝ることができた。
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