第30話
≪英依side≫
「英依がほしい。」
女は厭らしく舌舐めずりをして、妖しく赤い唇を持ち上げて嗤う。
身の危険とともに、心臓がぎゅうっと握られたように苦しくなって教室を飛び出した。
────「アンタなんか、いらないのよ。」
────「ごめん、だって……」
女の声が追い掛けてくる。
周りを見ることなく走り続けて、辿り着いたのは保健室。
「ん?どうした英依!顔真っ青だぞ!?」
『に、兄ちゃん……』
この学校の保険医は俺の従兄弟の兄ちゃんで、
他の教師は生徒たちが喧嘩しようが授業をサボろうが無関心だが、兄ちゃんだけは違う。
体格もでかく厳つい不良たちに腕っぷしでも口でも負けない兄ちゃんは、生徒たちからも恐れられている。
「ソファー座って、体温測れ。どっか痛いか?」
『……だ、大丈夫。ちょっと……転校生の女が最近やけに絡んでくるから。』
「【KINGDOM】の追っかけか?」
『多分、違う。【KINGDOM】のこと話題に上がったことねぇし。』
「ほー!話題、ね。なんだぁ仲良くしてんだな。」
『は、は!?ちっげぇーしっ!』
「お前が女子と話すだけで凄い進歩じゃん。前まで女が隣の席になっただけで蕁麻疹出てただろ?まともに会話してるだけでえらいなぁ!」
わしゃわしゃと俺の頭を撫で、ニカッと笑った兄ちゃんに言われて初めて自分があの女に対して拒否反応を出していないことに気がついた。
俺は前回の席替えの時に、クラスで二人いる女子とたまたま隣の席になってしまった。
その時、「よろしくね」と言われて両腕に蕁麻疹が出てきたのだ。
その女が悪いのではなく、バスでたまたま女の人が隣になっただけで蕁麻疹が出てバスを降りたこともある。
「生きにくそうだな」とチームの友人に言われたこともある。
自分でもそう思う。
せめて蕁麻疹は治したいが、自分ではどうすることもできない。
兄ちゃんがいうには、潜在的なストレスのせいらしい。
しかし、初日にアイツに担がれた時も隣の席になった時も嫌だったけど、蕁麻疹や吐き気も襲ってこなかった。
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