第32話
どのくらい寝ていたのか分からないが、ポンポンと肩を叩かれて重い目蓋をこじ開けると白い天井。
『ん、んっ……?』
「英依、昼休みだぞ。俺職員室に呼ばれたから行ってくるけど、教室戻るんだぞ。」
『ん、ありがとー』
頭が重い。体も怠いな。
のそっ、と起き上がってボーッとベッドに腰掛けて欠伸を一つした時、閉まったはずの扉が開く音がした。
ベッドからは誰が来たかは見えない。
『兄ちゃん……忘れ物?』
保健室は兄ちゃんがいるから、保険医の兄ちゃんか来るとしても体調が悪かったり怪我をした生徒しか寄り付かない。
昼休みに好き好んで恐い教師の元に来る奴はいないだろう。
だから兄ちゃんが忘れ物でもしたのだろう、と兄ちゃんがいるであろう部屋に顔を出すと緑色の厳つい男が保健室の扉を開けて中を窺っていた。
「あ?」
男は俺を見て驚いた顔をしてから、ニヤニヤと怪しく嗤いながら後ろ手に保健室の扉を閉めた。
「奥名はなちゃんじゃん?そんな乱れた格好で、さっきまでナニしてたの?」
男に言われて自分の服を見ると、寝起きで服が少し着崩れていた。
多分こいつが考えているのは如何わしいことだ。
『っ、』
ああ、この目。
ギラついて、欲を孕んだ目を知っている。
マジかよ……なんで俺はこんなに運がないんだ。
こんな奴ばっか寄ってくる。
ジリジリとにじり寄ってくる男に後退りをした。
一歩寄ってくる男に二歩逃げていた俺の足にソファーが当たり、バランスを崩してソファーに倒れてしまった。
「へへっ、誘ってんのか?ぅぐっ!!」
『きっもいんだよっ!!』
覆い被さってこようとした男の急所を下から力の限り蹴り上げ、隙が出来た瞬間に保健室を抜け出した。
同性だから躊躇われるそこの攻撃も、悠長なことなんか言ってられない。
そこを押さえて呻き声を上げた男のことなんか知らん!!
無我夢中で走って、バイクに乗り学校を飛び出した。
ああ、兄ちゃんに午後は授業出るって言ったのに嘘になっちゃったよ。
罪悪感が募ったが、学校に戻る気にも家に帰る気にもなれずに溜まり場に行こうとハンドルをきった。
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