第29話

「一樹って、すごーく積極的だよね。」



『ほしいものには貪欲なんだ。』



「清々しいなー。また授業始まるまで英依帰ってこないじゃーん。」



英依は最初は不良に憧れた不良もどきだと思っていたが、授業には帰ってくる。

見た目は美少年で派手な見た目だが、学校での素行は至って普通。



『英依も和巳も不良じゃないだろ?なんか、他の生徒と違うのはなんで?』



「あれ、知らなかった?へー……知らないで英依にちょっかいかけてたんだね。」



『ん?なんだよ。勿体ぶらずに言えよ。』



「英枝は【KINGDOM】のメンバーなんだよ。しかも、立場はお姫様。あんな喧嘩っぱやい奴が姫なんて、笑っちゃうよね。元は特攻隊だったのに、顔は美少女ばりに可愛いからいっつも狙われちゃうんだよね。」



『きんぐだむ?ひめ?……なんだ、それ。』



それから和巳が教えてくれた話は、あっちの国でもお嬢様学校でも聞いたこともない話だった。

転校前から調べていた段階で暴走族がいるとは知っていたが、それが【KINGDOM】とまでは興味なくて調べていなかった。



『面白そうじゃん。』



「え!じゃあ、仲間に一樹のこと紹介しようかな。」



『あ、それは面倒だからいらない。私は英依がほしいだけだから。』



「ほんっと、清々しいね。そういうところ結構好きだよー。」



『ありがとう。』



ケラケラと楽しそうに笑うと、和巳の大人っぽい顔立ちも幼く感じるな。

どこが笑い処だったかは分からないが。



「ねえ、英依のどこに惚れたの?」



『惚れた?私は恋なんかしたことない。』



「え……?英依のこと好きだから、欲しいんじゃないの?」



すっとんきょうな顔をし、一瞬呆気に取られた和巳は前のめりに



『欲しい=好きは分からない。ただ、逃げられると追いたくなる……狩猟本能に近いものだと推察している。英依は泣いた顔も怒った顔も最高に可愛い。』



だが、最近はそれだけじゃない。

英枝の笑った顔を見ると、心臓が締め上げって軋む痛い感覚がある。

心臓の病気ならば病院で見てもらいたいところだが、父に言ったら大層面白いと笑っていた。

そのことを和巳にも言ってみると、和巳は呆気に取られた顔をして小さく笑った。

それはまるで、何か難問が解けた時の子供の顔。



「それさ、───じゃない?」



大事な部分が予鈴のチャイムによってかき消され、もう一度聞き返しても和巳は教えてくれなかった。



そして、英依は授業が始まってからも帰って来なかった。





≪一樹side end≫

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