子羊の願い
第28話
≪一樹side≫
私はマゾじゃない。
暴言を吐かれて、それを喜ぶような趣味はない。
どちらかと言うと、精一杯の暴言を振り絞る顔に興奮してさらに困らせたい、もっと苦しめばいいと嗤ってしまう。
そんな私を、家族は「鬼畜」や「ドS」と言うのだ。
『ねえねえ英依?』
「話しかけんな!」
ツンケンしてそっぽを向く横顔には、苛立ちが隠すことなく出ている。
『はーなちゃん?』
「気色悪ぃ呼び方するんじゃねぇよ。笑いがって……!」
悔しそうに瞳を潤ませて怒る英依に、もっと苦しめと胸が高鳴った。
最高に可愛いな。本当に男か?
『英依が可愛くて、つい。』
「可愛いって言うんじゃねぇ!!」
『英依、どうしよう。こんなに胸が高鳴るのは初めてなんだ……』
「え……いや、俺」
何故か顔を赤らめた英依と和巳は、顔を見合わせた。
和巳は大爆笑しながら英依を肘で突っつく。
「一樹、熱烈だねー。英枝良かったなー。」
「ば、馬鹿!!」
『もっと泣いた顔が見たい。』
「「……は?」」
胸が高鳴るのは、興奮しているせいだ。
嫌がる英枝の頬に触れ、髪の毛を愛でて小さな唇に指を這わせる。
『英依がほしい。』
「!?!?」
舌舐めずをすると、肩を震わせて英依が教室から逃げ出す。
この一連の流れは既に定着してしまって、最初は茶化したり好奇な目を向けてきたクラスメイトたちも慣れたもので微笑ましく眺めているだけだった。
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