第21話
嘉乃とテルがじゃれあうような取っ組み合いを始め、その間に鼻血が止まったらしい慧斗がゆらりと俺の隣に並んで顔を覗き込んでくる。
「夏樹くーん、テルと何してたの?」
『え、サボって喋ってただけだけど。』
「ふーん……本当に來禅のこと知らないの?」
『あー、なんかわりぃな。』
「ふーん。」
慧斗は自分から聞いておいて、俺の返事が気に入らなかったのか気のない返事をした。
しかし、その目は愉快そうに細められた。
テルとはまた違う、ふよふよした変な雰囲気の慧斗の横顔を見る。
俺に興味が失せたのか、慧斗は欠伸をした。
……猫みたいなやつだな。
「お!じゃあ、俺たちが校舎案内してやるよ!どうせこの宇宙人はやってねぇんだろ?」
テルに髪を引っ張られながらも涼しい顔をした嘉乃は、慧斗と俺の会話を聞いていたみたいでそう言ってくれた。
『ありがとう。サボっててなんだけど、授業いいのか?』
「ふはっ!確かに転校早々サボってるくせに俺たちの心配してくれんのか?この学校成績さえ良ければある程度のことは多めに見てくれんだよ。ほらー行くべー。」
見るからに不良校だから、校則は結構緩いみたいだ。
授業をしている教室を見ると、教室の後ろでうんこ
座りして喋っていたりキャッチボールをしている生徒に先生は何も注意していない。
見て見ぬふり。
ただ、教卓で黒板を使って一人で授業はしている。
廊下で喋っている俺たちにも無関心。
前の学校とのあまりの違いにさすがに驚きを隠せない。
嘉乃の号令で、俺たち五人は嘉乃を先頭に歩き出した。
慧斗と來禅も一緒なのは少し意外だ。
テルは一人鼻歌を歌って俺の手首を引っ張ってくれている。
……あ、亜樹のクラスだ。
俺のクラスとは違い、寝ている生徒がほとんどだが、わりと静かだ。
「俺と慧斗はF組なんだよ。そういや、俺たちのクラスとA組にも転校生来るらしいけど、同じ日って偶然すげぇよなー。朝会ったりした?」
『おー。』
会ったも何も一緒に来た。
まず、姉妹だからな。
「どんな奴だった?女三人ってのは聞いてたけど、デマだったし。」
『どんな……F組の……お前らのクラスの奴にちょっかい出すなよ。寧ろ話しかけるな。近寄るな。』
「え、え?」
対人恐怖症とまではいかないが、同性も苦手で異性はもっと苦手というか恐怖対象に認識する亜樹のことだ。
嘉乃のようにフレンドリーに歩み寄られても警戒して逃げ出して、猪のように俺かイチ姉に突進してくる。
そして「折角話しかけてくれたのに私は逃げてしまった」と激しい自己嫌悪に陥るネガティブちゃん。
そしてアイツのバックには、凶悪鬼畜な最恐のイチ姉がいる。
『忠告だ。』
どうか、俺に被害は及ぼさないでくれ。
「お、おぉ……」
4人に鋭い目を向けて“お願い”をした。
嘉乃は若干引いていて、來禅と慧斗は訝しげに眉を寄せた。
そしてテルはというと、全く人の話を聞いていない。
「なっつん、恋人いるのー?」
『いや、いねぇけど。』
「えー!顔良いからモテるっしょ?」
中性的な顔立ちのおかげで、モテるにはモテた。
しかしそれは女子からだ。
なにせ女子校だったからな。
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