第12話

まるで動物園のようだ。

一変に自己紹介をされても、誰がどの声か分からないから顔と結び付かない。

口の動きが見える人の名前は認識出来たが、覚える気はさらさらない。



「大神さんの席は、窓から二列目の後ろよ。」



『はーい。』



寺本先生は、教室がどんちゃん騒ぎでも気にしている様子はない。

これが通常運転ということなのか。

以前までの学校とは異なり、騒がしいがこれもこれで面白いことがありそうだ。



上機嫌で指定された席に荷物を置き、腰を下ろした。



『ねぇ、君名前は?』



「……。」



私のことをチラリとも見やしない。

第一印象が悪すぎたせいか、少年の机を揺らしても口をつぐんだまま動かない。



「英依に話しかけるとは……強者だな。」



クラス中からの好奇な目は、少年の名前を教えてくれた。

英依か……名前まで可愛いな。



『英依』



「っ!なんで」



『誰かが呼んでたから。合ってる?』



「……ち、違う。」



分かりやすい奴。

どうやったら泣かせられるかな……。



ホームルームも終わっても、遠巻きに見られている状況に変わりはない。

英依を眺めていると、英依の前の席にいる背の高い男が振り返る。



「俺は花崎和巳、こっちは奥名英依。よろしくね。」



「か、勝手に教えるな!」



『ああ、よろしくな。』



和巳は女ウケが良さそうな優男風な中性的な顔立ちに、組んだ脚が長くスタイルが良い。



……もう少し身長低ければな。



仲良く談笑する二人を観察していると、授業が始まった。

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