第9話

「そ?英依がいつもよりも嫌な顔してなかったから、ちょっと気になるな。」



『嫌だったに決まってるだろ!思い出したくもねぇよ、あんなゴリラ……いや、あれはもっと獰猛だった。クマだ、ヒグマ。それよりも、もっと肉食的な……ホッキョクグマ?』



「おいおい、それは寧ろ保護して動物園に返すべきだろ。歩かせてらんねぇよ。よく生きて帰ってきたな。」



あの女をなんと表現するのもっとも相応しいのだろう。

悩む俺の頭に手を置き、わしゃわしゃと頭を撫で付けられる。

今まで会った女とは少し違う獰猛さを持ち合わせた猛獣。

絶対にもう二度とお目にかかりたくない。



クスクスと声をあげて笑う和巳は、再度首を傾げる。



「その子、何処で会ったの?」



『学校。理事長室に用事があるって……あれ。』



そういえば、情報通の康介が数日前に気になることを口にしていた。

学校に転校生が三人来ると言っていた。

それも女と言っていた。

俺が会ったのも、女二人と男一人。



すっかり頭から抜けていたことを思い出し、背筋がひんやりとして冷や汗がこめかみを流れる。



「まじかー。もしかして、噂の転校生じゃない?」



『う、嘘だーっ!』



俺の絶叫が校内に響き渡って、敵襲か、と軽く騒ぎになった。

あまりのショックと、不安。

そして、何故かまたあの女に会う気がして妙な胸騒ぎで失神しそうになったのだった。






《英依side end》

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