第2話



「は?なんで。」



「本部に戻る。ここのは孝人に任せることにした。短期ではなく、長期になるからお前たちも連れていく。」



一番に噛みついたのは、夏樹だった。

私たちは今、父と孝人叔父さんと共にアメリカに住んでいる。

父の会社の本部と言えば、母国の日本だ。



 『いつ?』



「来週。学校はもう決めたから、準備をしておくように。」



父さんが言うのなら、私たちは文句が言えない。

言ったところで意味がない。

我が家の決定権は全て父にある。

大人しく私たちは、その日の内に友人たちに別れを告げた。

惜しまれながら、6日後には日本行きの飛行機に乗っていた。



「イチ姉、荷物片付けたー?」



『んーあと少しー。ナツは?』



「だる…。」



『なー。』



部屋は違うのに、家具は一緒だから変な感じ。

新鮮でもないけど、懐かしいものもない。

リビングで、引っ付きナツとグダクダしているとアキが階段から降りてくるのが見える。



「あれ……二人とも、もう終わったの?でも、なっちゃんの部屋の前に段ボール積んであったよね……。」



コイツ、部屋の中にすら運んでないのかよ。

隣でリモコンを弄るナツを足で軽く突っつく。



「チッ…痛。」



『はっ、』



あからさまに顔をしかめたが、反抗してこないのは我が家は力関係がはっきりしているから。

睨んでくるから、鼻で嗤うのはいつものこと。



「いっちゃんは?」



『あと少しー。』



亜樹が、可愛らしく小首を傾げてくるのがあまりにも可愛いから、チョコを投げつけた。



「ありがとう……じゃなくて、二人とも。明日から学校なんだよ!?」



亜樹は天使だ。

頬を膨らませて怒るところも、鬼可愛い。



亜樹が憤怒していると、自由人夏樹が「そうだ」と何かを思い出したようだ。

それに対して、アキが呆れたように溜め息を吐く。



「イチ姉、次の学校ってどんな所?」



『男女比9:1の元男子校。暴走族ってのがいるらしい。』



調べてみると、父さんの母校だった。

だから父さんもそこを選んだんだろうな。

聞いてきたわりに夏樹は興味がないようで、テレビのチャンネルを変えて流れた音楽に、自分の鼻唄をのせ始めた。

反対に、亜樹が不安そうに顔を青くした。



「えっ……私、男の人苦手なのに……。」



「あー、狙われないようにねー。」



ニヤニヤと悪戯っ子の笑顔の夏樹が、亜樹の反応を見て楽しんでいる。

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