第30話
痛くはないけど、その手に達沙のすべてが籠もっているような気がして、私も彼の手を握り返そうとしたその時───
「真野に触んな!!!!」
廊下に響き渡る、聞き慣れた声。
聞き慣れているけれど、こんな怒鳴り声を間近に聞くのは初めてかもしれない。
私は握ろうとした手を咄嗟に引っ込めて、そちらの方向へ向く。
達沙は私の腕を放そうとはしなかったけど、少しだけ私を掴む手を緩めた。
私と達沙、そしてこの場にいる全員の視線を独占したのは───
「俺の真野に、触んじゃねえ!!!」
怒りを達沙にぶつけている、私の兄である耶麻だった。
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