第8話

車が止まったのは少し遠くにある商業施設。



『あのさ……やっぱりなんでもない。』



「え……なに?その「なんでもない」が一番気になっちゃうんだけど?」



『……いや、やっぱり柳の人間だから近場だと身バレとかあるから避けるのかなーって。組長の側近ってそっち業界では有名だからかなって考えてて。』



「そんなことないよ。むしろ別のシマ行く方が警戒する。」



光くんとしたデートなるもの。

観光地を巡れて楽しかったが、車移動で日帰り旅行と呼べる距離だった。



獅子さんや光くんや晃。

上の人ほど顔と名前は知れているだろう。

だから迎えや護衛などこ外のに出るときには関わってこない。

忙しいからってのもあるだろうが、意識して避けている節がある。



理由は明白だ。

それは私が提示した契約によるものだろう。



学生の間、私が柳の人間であることを口外しない。

それを徹底して守ってくれている。

もしもを考えてて、先の先のことを予測して動いている。



「でも、俺の場合は逃げ……かな。俺が向き合うのを恐れてるから。弱っちいの、高橋光って男は。」



『恐いことなら、僕もあるよ。』



父は怖いし、まだ一人で夜道は怖い。

季節が変わったらもっと駄目かもしれない。

光くんが何を恐れているかも分からないけど、苦しそうな顔をしている光くんを放ってはおけない。



『一人で恐い時は、手を握るといいんだよ。ほらね。』



「……ははっ、ほんとだ。」



光くんの手を握り、上下に振ると光くんは俯いてクスッと笑ってくれた。



私は色んな人に励まされて、助けられてきた。

だからその分、私も誰かに分けられたらいいな。



『行こう!』



「うん。美味しいコーヒーのお店があるんだ。」



『それは素晴らしいね。光くんがコーヒー好きとは初知りだよ!僕もコーヒー大好きなんだ~!』



両親ともにコーヒーを好いていた。

私は勿論紅茶も愛してやまない。

そして何と言っても父がコーヒー依存症と呼べるくらいの愛好家だ。



「黒斗さんコーヒー好きでしょ。」



『そうだよ!なんで知ってるの!?』

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