第363話
「紗希さん。」
黒い傘を差して、10m先くらいに驚いた顔をしてそこに立っていた。
すぐに俺の所にまで駆け寄ってきて、傘を差し出してくれる。
「濡れるよ!?」
「いいんです、雨に打たれたい気分なので…。」
そう言って、彼女が差し出してくれた傘を拒んだ。
彼女が濡れてしまっても困るし、ただ自分も濡れたかったから。
そう言うと、強制とまでは言いぬくかったのかその後は何とも言ってこなかった。
でも、やはりそれはそれで気になったのか傘を差し出すのではなく……
「家…入る?」
そう言って、家を親指で差して俺に入るように促した。
その好意には、俺は黙って甘える事にした。
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