第21話

《紫苑side》



ドクンッドクンッ、と心臓が激しく脈を打つのを聞きながら目を細めた。

小さく息を吐き出す。

やり残したこと……残りの時間を大切な人たちと過ごすこと。

私に出来ることなら、二人の力になりたい。



でも、本当は少し怖い。

もう長いこと会っていたい私を、二人は受け入れてくれるのだろうか。

第一、分かるかな……私のこと。

会いたくないってことも考えられる。



「紫苑、アンタに話がある。着いてきて。」



『ん?うん、いいよ。もしかして……リンチのお誘い?私痛いの嫌いなんだけどなー。』



「馬鹿紫苑。堂々と誘う奴がいる?意表を突くにしては突飛すぎる。そんなことするとしたら、アンタくらい頭の可笑しな人の考え付くことね。」



『褒めてる?あははーありがとう。』



透が全力で顔を歪め、不快だとアピールされる。

あの二人も、こうして露骨に嫌な顔をしてきたら私は耐えられるかな。

覚悟しないといけない。



連れてこられたのは食堂。

食券を自動販売機で購入して、列に並ぶようだ。

食堂にはおぼんに乗った栄養バランスが整った定食を食べる人、手作りのお弁当を食べる人、コンビニもしくは購買部で購入したおにぎりやパンを食べている人もいる。

定食だけじゃなく、サラダ付きの麺類やカレーもあるらしい。



正直、食欲はないが何か腹に入れないと活動限界を迎えると面倒だ。

透と同じお魚定食を選び、二人で席についた。



「私、生徒会長やってるの。」



『ほー、透らしいね。』



早々に本題を切り出してくれるところも、透らしい。

でも、興味を引かれる話じゃない。



「生徒会に入らない?」



『え……それってそんな勝手に決められるやつなの?そうであっても嫌だなー書類とかやりたくないよ。』



放課後には、たくさん遊びたいことがある。

書類整理やらまとめやら、今までもこれからも嫌と言うほどやらされる。



「私も本当はアンタが生徒会に向いてないって分かってる。危険人物を傍で監視した方が面倒事がないんじゃないかって思った。」



『危険人物……監視なら、生徒会に入れなくてもクラス一緒なんだし。こうしてお昼も一緒に食べてる!あとは帰るだけでしょ?送り迎えもしてくれるの?』



「確かに……いきなりアンタが現れて、私も動揺しているみたい。らしくないわ。」



感動の再会を果たした親友への言葉とは、到底思えない。

仕返しに付け合わせの野菜を透の皿に放り投げる。



「こら、野菜も食べなさい。」



『アンタは私の姑か。』



「こんな闘牛みたいな嫁はいらん。」



『闘牛……』

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