第22話
仕返しにあげた野菜が戻ってきて、それをまた透の皿に返却する。
『それよりさ、さっきの……太門だっけ?透のこと見てうげーって顔してた男。』
「笹木大門よ。」
『やたらとID聞いてきた奴。IDって何のID?』
「通信アプリのでしょ。」
『ほー……なにそれ。』
「は?」
顔をしかめて怪訝な目をされたが、透は面倒見が良いから教えてくれた。
現代の高校生は通信アプリなるもので連絡を取り合い、時に愛を囁くらしい。
もうメールは古いと言われた。
『透の教えて。』
「変なの送ってこないでよ。」
『私と素早く連絡とりたくない?監視になるよ?』
「監視とか言ったこと根に持ってるのね。はいはい。」
もうすでに忘れかけていたが、これで透の連絡先を手に入れられたからそういうことにしておこう。
それにしても、騒々しい学校だ。
笹木大門が教室で騒ぎ、次は学食の外が何かと騒がしい。
そしてそれは、どんどん此方に近付いてきているのは気のせいかな。
『楽しい学園生活になりそうだね。』
「面倒事を起こさないでよ。」
『起こさないよ。巻き込まれちゃうの。』
「首突っ込むんでしょ。」
『ごちそうさま。』
透に野菜を押し付けたおかげで、食事も早く終わって先に食器を片付けた。
追いかけてきた透のお皿は食べ残しもなく綺麗だった。
食堂を出て、教室に戻ろうとしているのに人が多くてなかなか進まない。
よく見ると、女子生徒が多い。
『いって』
「何を騒いでいるの?」
「あ!!竜胆会長!」
「竜胆会長!?」
「今日も麗しい!」
麗しい……ブフッ、と笑いが堪えきれなくて吹き出すと男子生徒に思い切り睨まれた。
しかし、その子は直ぐに頬を染めて私を凝視する。
「し、おん……」
そそくさと逃げようとする私を、あまりにも弱々しくて今にも消え入りそうな声が引き留める。
キョロキョロと辺りを見渡して、生徒たちに囲まれていても頭が飛び出している高身長二人の姿に息を止めた。
縫い付けられたかのように動かない体。
五月蝿いと思っていた声が遥か遠くに聞こえる感覚。
「紫苑?」
透の声がする。
しかしそれよりも、囲まれている二人の声の方が耳に響く。
『……帝、杏璃』
二人の驚いた顔を見て、私が次に取った行動は“逃げる”ことだった。
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