第20話

窓にへばり付く生徒たちの視線を辿ると、校門から悠然と歩いてくる兄の姿。



「お、帝も来たのか。」



どんだけお隣さんに挨拶するの嫌だったんだよ。



しかし、そんなことよりもまずは転校生の“紫苑”を一目見たい。

見なければと気持ちばかりが焦り、足が重く息が苦しくなる。



「杏璃くん、なんかあった?」



「まじで顔色悪りぃぞ?」



『ちょっと、トイレ。』



胸ぐらのシャツを握り締め、息を抑えて教室を飛び出した。

向かったのはトイレではなく、転校生がいるであろう教室。



「杏璃様!?」



「杏璃さん、どうされました?」



『……転校生って、どの子?』



俺の姿を見て声をかけてきたのは、【神王】のメンバーの一人。

俺の問いかけに教室を見てから、眉を八の字に下げる。



「すみません、今いないみたいです。……太一、転校生さんは?」



「転校生なら、竜胆透と出ていきましたよ?」



『生徒会の……分かった。ありがとう。』



もどかさを抑えて、教室を出ようとした。

太一が思い出したように声を上げる。



「杏璃さん、転校生とは親戚かなんかですか?」



『なんで?』



「名字が……」



太一の言葉を聞いた瞬間、教室を飛び出して携帯を握り締めていた。






《杏璃side end》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る