第253話
優しく笑う彼に、胸が抉られるような感覚に陥る。
―――…以前までは、こんな罪悪感を抱いたことなどなかったのに。
「久しぶりだな、紗綾。」
「はい。」
気まずい空気が流れているような気がするのは、多分私だけではないと思う。
少し困ったように笑っている上条さんを見て、それを確信した。
彼は、本当に私に会いに来てくれたのだ。
約束した、からだろう。
何って、律儀で―――…温かい人。
私なんかのために悩んで、私なんかのためにこうやってまた会いに来てくれて……どうしてそんな風に私に笑いかけてくれるのだろう?
那留兄さんから少しでも離そうとしてくれた彼を。
彼氏の振りをしてくれていた彼を、私は裏切ったのだから。
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