第97話
―――…違う。
違う、わ。
何をしているのだろう、自分は。
自分を戒める前に、自分が馬鹿だと嘆く前に、私がしなければならないことがあるはずじゃない。
私はキッと“彼”を睨んで、砦にその場にいるように言われた場所から足を動かす。
もちろん、誰も視界に入れず……彼だけを見つめて。
私が走りながら彼に駆け寄った時、彼は不思議そうに私を見つめるのを私はさらに睨みつける。
そして―――…右手を彼の頬に振り落した。
パシンっという音が、この場に響く。
「―――…っ。」
それほど痛くなかったみたいだけど、彼はそれに顔を歪めた。
―――…驚いたのだろう。
私が四谷さんにそんなことをすると思っていなかったから。
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