第84話
私は兄さんのことを知らない。
何も、知らないのだ。
何も知らないことは――…何って愚かなのだろう。
何って……無知なのだろう。
そんな自分を大きく恥じながら、私は思う。
ねえ、兄さん。
私は兄さんの答えを予想できるほど、アナタのことを知りません。
……ううん、全く知らない。
でも、でもね。
私なら、楔さんにこう言いたい。
抱きしめられていた私は砦に腕を解いてもらって、楔さんの方にへと歩き始める。
後ろからは砦がゆっくりと後に続いてくるのだが……まあ、それは置いておこう。
楔さんは近づいてきた私に、顔を向ける。
彼のその顔をじっくりと見ると、誰かの面影を思い出す。
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