第607話

薬を飲んで寝たからなのか胃も回復した。


無事回復したので時間通りに家を出て、時間通りにバスに乗り、時間通りに短大に到着。


そうして、時間通りに授業が始まる。


卒業が近くなると授業の回数も減るらしいが………………


授業の内容は濃いんだよねぇ。


授業が終わると帰る準備だ。


今日は何事もなく終わったな。


さて、バスの時間もあるし帰らなきゃ。



「椎名さん。サークルに寄らないの?」



日向が声をかけてきた。


サークルか。


今の私には余裕がないからサークルから離れていた。


何かあったのだろうか?



「あなたは行くの?」



「呼ばれたからね。今は就活の時期だからサークルに行く人も少ないけど後輩に呼ばれた」



後輩に?



「そう」



私は呼ばれていないから行く意味ないと思うけど。


声を掛けづらい先輩って必ずいるでしょう?


私はその分類らしい。



「ん?何も言われてないわけ?」



「何も言われてないけど」



「………………文化祭の件なんだけど。何も言われてないんだね」



言われてない。


忘れられた?



「あぁ、文化祭の話ね。何をするのか決まってなかったか」



製菓学科でも文化祭の出し物で盛り上がっているけど、サークルでもそうだよね。



「行く?」



行く?と言われても、誘われていないし………………


誘われていないのに行くのはどうなんだろう?



「行かない。今日は真っ直ぐ帰ると決めている」



「分かった。そう言っておくよ」



えっ?


言うの?


日向は軽く手を振ってサークルがある方向に歩いて行った。


私もバスの時刻があるから帰らないと。


なぜ、日向が呼ばれたのか、その理由は次の日に分かった。


短大に着いて教室に入ったところまではいつも通りだった。


だが、日向の周りにいる連中はいつも通りではなかった。


凄く笑っている。


何がそんなに面白いのか馬鹿笑いしているのだ。



「おはよ〜、うるさい連中だよね」



「おはよう。大塚さんが私より後で来るの珍しいね」



「ん〜、コンビニ寄ってきた」



「そっか。なんだか、日向の周りが賑やかなの」



「そうだねぇ。あんなに盛り上がるの珍しいよね。爆笑してるし。ねぇ!何がそんなに面白いわけ?」



大塚さんは笑っている1人に声をかけた。


その人は笑いすぎてお腹が痛いのか、お腹に手を当てながら片手で待てと合図する。


なぜ、爆笑していたのかは、日向の件で面白いことがあったらしい。


昨日、授業の終わりにサークルに寄ったところ後輩からお願いをされたらしい。


へ〜ぇ、あの後の話ってことか。


どうやら、日向だけ呼ばれたみたいで他の人たちはいなかった。


今回の文化祭はいろいろ力が入っているから、どのサークルも力が入る。


だが、それに日向を呼ぶとなると………………


『コイツ、後輩から宣伝係になってほしいって頼まれたらしい。目立つように服まで決められて。それがコレだ!』


見せられた紙にはチャイナ服の写真が載っていた。


これはコスプレ用の男性チャイナ服だよね?


なぜ、コレ?


………………。


目立つように………………


これを着た日向はよく似合う。


そして、目立つだろう。


日向を見るとなんとも言えない顔をしている。


嫌だと言えばいいのに。


後輩だって無理に頼んでいるわけではないと思う。


文化祭はまだ先だけど準備は今頃から始まるらしいから、早めに断るべきだと思う。



「断ったらいいと思う。そんなに嫌なら早く断るべきでしょう」



「普通はそう思うだろ?でもなぁ、ここの文化祭はちょっと異常なんだよ。学科もサークルも本気でやるからな」



やれることは全部やるってことか。


宣伝はとても大事なことだから他もそうだと思う。



「コスプレは目を引くからよくやるが、やっぱ映えが大きい。前はコスプレ集団で売り上げを一気にあげたサークルもあったからなぁ。てか、椎名さんは誘われなかったんだ?容姿がいいヤツは絶対に誘われる運命だぞ。断るのは許さないって圧を感じるからな」



ハハッと軽く笑っているが、笑い事ではない。


断ることができないということは強制だ。


それって、よろしくないのでは?


私は凄く嫌だから、呼ばれてもサークルには近づかないようにしよう。

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