第606話
暴飲暴食をしたわけではないが、重めなものばかりだったからなのか胃が苦しい。
朝起きても残っているのは相当だろう。
「若いのにねぇ。胃もたれしちゃうのねぇ」
お母さんは薬箱から胃薬を取り出しテーブルの上に置いた。
「胃薬飲む?というか、飲みなさい」
「ありがとう」
薬を手に持ちキッチンに行く。
コップを手に取り冷蔵庫から水を取り出してコップに注ぐ。
「そんな状態でバス乗れるの?大丈夫?」
「大丈夫。というか、乗らないと行けないし」
「私が休めたら良かったけど、今日はどうしても外せない仕事があるし」
「大丈夫だよ。気にしないで。仕事優先でいいから。お母さんのこと待ってる人がいるんでしょ?楽しみにしているお客さんを待たせちゃダメだと思うから」
「そうなんだけど。気持ち悪くなったらどうしようって考えるでしょ?」
今日は午後だけの授業だから、朝早くのバスに乗らなくてもいい。
少し休息できる時間があるから大丈夫だと思う。
「今日は午後から大丈夫だよ。寝る時間もあるし」
「寝るのはいいけど、ちゃんと時間になったら起きること。分かった?」
ちゃんと起きるから大丈夫。
というか、そろそろ家を出なければ行けない時間では?
「ねぇ?お仕事の時間は大丈夫?」
「あっ!もうこんな時間!?えっと、玄関の鍵はしっかりね!ちゃんとご飯を食べてから行くんだよ!」
「分かった。いってらっしゃい」
お母さんはバタバタと小走りでリビングから出て行った。
1人になったところで、ケイのご飯だ。
ケイはずっと私の足元にいる。
早くご飯を食べさせろとアピールしているのだ。
ケイのお皿にご飯を乗せていつもの台に設置すると、待ってました!と言わんばかりにガツガツ食べる。
よし、よく食べているから食欲は大丈夫だね。
今度は私のご飯だが………………
胃がよろしくないから、温かいスープがいいかもしれない。
キッチン収納棚をゴソゴソと探すとインスタントのカップ味噌汁を見つけた。
これならちょうどいいだろう。
カップにお湯を注いで混ぜる。
ちょっと置いたら完成だ。
インスタントの味噌汁って少ししょっぱいと感じるのは私だけだろうか?
家の味噌汁が薄いのか、コレが濃いのか………………
塩分の摂りすぎはよろしくないと言うけど。
夏はこのくらいの塩分がちょうどいいと思う。
ご飯を食べたはずのケイが私の足元をスリスリとする。
おやつが欲しいのだろう。
そろそろ検診があるから、食事には気をつけなければならない。
おやつの量も減らしている。
痩せたと思ったら、また太り始めたんだよね。
犯人はお母さんだと分かっている。
ケイは学習能力が高いから誰が一番おやつをくれるのか分かっているのだ。
「ケイ、さっきご飯を食べたでしょ?おやつはあげられない。ダメ」
「にゃーー」
「甘えたさんになってもダメ。お腹がぽよぽよになるよ」
人間の言葉を理解しているわけではないが、おやつが貰えないと分かったケイや足元から離れてソファーの上に乗る。
そして体を丸めて寝る体制に入った。
本当は低カロリーのご飯をあげたいところだが、味が気に入らないらしく食べてくれないのだ。
なので、低カロリーと通常のご飯を混ぜている。
割合は通常のご飯を多めだ。
検診までにもう少し体重を減らさないと、先生に太り過ぎと言われてしまうなぁ。
食べては寝て、食べては寝てを繰り返しているから、運動もさせなければならない。
新しいおもちゃでも買おうかな。
今あるおもちゃは飽きてしまったのかあまり遊んでくれない。
ペットショップで買おうか、ネットで買おうか。
………………。
味噌汁を飲み終えたところでスマホが震えた。
誰だ?
画面をタップすると真理亜からだった。
ん?
『緊急速報!幻のショコラケーキ限定10個販売!』
………………。
いつも通りで何よりだな。
限定10個ということは早くから並んで買うのだろう。
授業は休み?
昨日あれだけ食べたのに、今日も食べるのね。
やはり胃袋を日頃から鍛えている人には敵わないな。
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