第600話
私がここに来たのは、インターンシップがある企業を調べるためだ。
何事も経験をしてみないと分からないこともある。
ネットで検索してみたが、業種を絞ると少ないのが現状だった。
なら、短大に貼り出されている掲示板ではどうだろう?と思い来たのだが………………
日向の目線を辿ってみると、インターンシップを受付している求人票を見ていた。
どうやら同じものを探しているらしい。
「あなたも、体験が目的なの?あなたなら就職先はすぐ見つかるでしょう?」
「椎名さんも探しているのか。頼めばインターンシップもやってくれるところもあるけど、全部思い通りに動くわけじゃないから」
「………………」
必要なのか?
あれこれやっていたはずだし、私より経験豊富だ。
目標がしっかりしていたはずだから、就職先も余裕で………………
選び放題だから迷いが出るということもあるのだろうか?
………………。
この人の事より、自分のことだろう。
学業のことを考えるなら土日なのかもしれないけど、平日でも申請書を書けば行ける。
どちらも家から離れているから、高速バスで通勤することになるけど。
紙に手を伸ばし、ピンを外す。
「それにするの?」
「そうだけど。ダメ?」
「まぁ、こういうものは早い者勝ちだからね」
日向はそう言って立ち去った。
どうやら、私が持っている紙がお目当てだったらしい。
チラッと紙をもう一度見る。
これを持って教務室に行かなければならない。
手続きは生徒ではなく先生が担当するらしい。
教務室に行って、求人担当に先生を探すとソファーに座ってコーヒーを飲んでいるのが見えた。
寛いでいるところ申し訳ないけど、コレの話をしなければ帰れない。
「先生、すみません。コレお願いしたいです」
「ん?あぁ、求人か?………………なんだ、インターンシップか。平日だがいいのか?」
「はい」
「そうか。椎名がコレを持って来るなんて意外だな。お前なら、調理系を探すのかと思ったが。商品企画に応募するとは、まぁ、いい経験になるだろう。グループで意見を出し合うが大丈夫か?」
「はい。お願いします」
「分かった。手続きはやっておくから、申請完了したら知らせる」
「分かりました」
あとは返事を待つだけだ。
誰でも受付する事は出来るが、定員オーバーで断られることもある。
だから、あまり期待はしないで次を探しておこう。
教務室から出て、門があるところまで歩くとよく知っている人が立っていた。
こちらに軽く手を振っている。
ん?
手招きしているのか?
近くに寄ったことで気づいたことがある。
あら?
何か服装が………………
「どうしたの?そんな服装で」
「嬢ちゃんのお迎え」
「大塚さんは?」
「車に乗ってるん」
なるほど。
先に回収を………………
言い方おかしいか?
「ご機嫌が悪いのはよく分かる。というか、その服装でここにいるからなんとなく分かる」
海が来ているスーツはパリッとした感じのスーツで、どう見ても裏の服装だ。
仕事終わりか、これから行くのか分からないけど。
まぁ、機嫌が悪いことは分かった。
後部座席のドアを開けて乗り込むと、海はすぐ運転席に乗り込んで車を発進させる。
「いいのあった?」
「申請はしてきたよ」
「そっか。よかったね」
「通ったらいいけど。次、探すつもり。で?海の件はどうなの?」
スーツ姿はしっくりくるなぁ。
でも、営業マンみたいな感じではなくて、あっち系で似合っているというか………………
「ヤバめな感じは全く抜けないのねぇ。今日はいつもより重めだから、より際立つ」
「嬢ちゃん、それは褒めてないんよね?」
「似合っているという意味だけど」
「………………なんかおかしいなぁ。訳を話すわぁ。今日は会ってきたん。やらかし馬鹿野郎に。エプロン姿じゃ会えんしぃ」
正装しなきゃ会えないってことなのね。
交渉をしに行ったのか………………
奏多の上司である柚月に会いに行ったのだ。
「どっかで待ち合わせというより、事務所に行ったのね?その服装ならそうでしょ?言いたいことは言えたの?」
「嬢ちゃん、相手は壱夜よ?分かってんのに聞くん?」
「付き合い長いでしょ?」
海なら上手く話せるのでは?
だから行かせたと思う。
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