第577話
「何を見せられているんだろうねぇ。こんなの見るために来たわけじゃないよ。このタイミングでよく檜佐木君に電話しようと思ったよね?あとで連絡するって言ったの聞いてなかったのかな?こんなに近くにいて、聞いてなかったことなんてある?椎名さんの笑顔は貴重だけど、それは俺と話している時に見たかったよ」
柚月はニコニコ顔をやめて、冷ややかな顔をしている。
余程、面白くないらしい。
『俺と話しているときの凛はよく表情変わるぞ。本人はあまり気づいてないが。お前と違って自然体だ』
「人の話に混ざってこないでよ。自然体って何?それって君だけ限定じゃないからね。勘違いしないでくれる?俺と話しているときだって、自然体でしょ?」
『お前と話している時は頭の中が常にフル回転だろ。俺のときはそんなフル回転しないぞ』
「それは馬鹿な事しか言わないからじゃない?」
『………………喧嘩売ってるなら買うぞ?』
「は〜ぁ、疲れる。もう連絡取らなくていいかな?君のボスに直接話したほうが早いかも」
『あの人なら俺の目の前にいるけどな。こっちもスピーカーだ』
「一番上の人から怒られているってこと?いい度胸しているよ、檜佐木君。その状況で電話に出たのか」
『叱っているのは別の人だし』
なるほど。
柚月は亜紀と話すときが一番表情が崩れるかもしれない。
いや、演技力が崩れる?
年頃………………
なんて言ったらいいのか………………
まぁ、そんなことより亜紀の現状があまりよろしくないのでは?
「ジュンさんがそこにいるってことなら、電話は切るからね。そんな状況でよく出たわね」
『お嬢さん。彼はもう3時間もお説教中でね。集中力が切れているから、このまま通話を続けても問題ないよ。お説教中だからって休憩がないわけではないよ。しかし、お嬢さんは面白いね。仲が悪い2人を気にしていないなんて。もしかしてワザとかな?』
そう言ったのはジュンさんだろう。
保護者からの許可は降りた?
「3時間のお説教お疲れ様です。大変ですね。ヤンチャな子を預かっているみたいで」
『そうなんだよ。想像以上にヤンチャな子でね。一緒に来た子と違って悪知恵がよく働くんだ。まぁ、悪いことではないけど、やり過ぎるのは良くないから。ちゃんとそこは叱ってあげないとね。子供を一人前にするためには、根気良く教えなきゃならない』
悪知恵がどんなものなのか聞かないでおこうかな。
きっと良くないことだし、私が聞いていい話ではない。
「檜佐木君は、そっちに行っても変わらないらしいね。そのうち、大怪我するよ。こっちより、そっちのほうが危険度高いし。理解しているのか、していないのか………………それとも馬鹿なのか」
『うるさい。こっちは1分2分で状況が変化するんだよ。その場で瞬時に判断して行動してんだ』
「俺なら君みたいな子は嫌だなぁ。奏多も馬鹿やらかすけど、それ以上ってことでしょ?え〜、後処理が面倒だな」
『俺もお前みたいな多重人格野郎は嫌だ。お前の部下は苦労してんだろうなぁ。大事にしたほうがいいぞ』
この言い合い、もう飽きたな。
「もう家に帰るから電話切るね。お説教を早く終わらせるためには、しっかり反省することだと思う。というか、亜紀のことを叱ってくれている人も疲れてるでしょ?この電話が続けば終わらないし。また連絡するね」
そうして通話を切った。
よし、帰ろう!
「海、帰るよ」
「嬢ちゃん、やりたい放題で終わったみたいな感じになってんけど、ええんな?これでええの?」
「別にいいのでは?亜紀が元気だったことは確認できたし。いつもの彼だったでしょ?」
「………………帰ろうか。壱夜、ちょっと退いてぇ」
海がグイグイ柚月を押す。
何か言われるかな?と思ったが何も言わないで席から立つ。
彼も何もないようだ。
それか、もう話は終わったから?
「ここの会計は済んでるから、このまま帰っていいよ。またね」
柚月はレストランから出て行った。
あっさりだな………………
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