第570話

私は光さんのお店でクロワッサンを食べたので、お昼ご飯は抜きでも大丈夫だが大塚さんは食べていない。


なので、コンビニに行こうと言ったのだが、時間がないからそのまま行こうとなった。


何かお腹に入れておかないと気持ち悪くなるのではないか?


本人は大丈夫と言っているから無理に食べろとは言えない。


お昼ご飯を食べない代わり、終わったら海の奢りで夕ご飯を食べることになった。


会場の駐車場に着くと、海はここで待機するそうだ。


エレベーターで会場がある階層まで行く。


フロアに着くとスーツを着たたくさんの就活者がいた。


受付を済ませて会場の中に入ると、ブースがたくさん設置されていた。


その一つ一つに企業が入っているらしい。


見せ方はそれぞれ違うらしく、紙で説明するところやモニターで説明しているところもある。



「結構いるね。どこから行こうか………………」



そうだなぁ。


有名店の企業から見るのもいいけど、地域密着型から見るのもいい。


全て料理系ではないから、絞ることはできる。



「大手は目立つね。力が入ってるよ。看板から違うもん」



それはそうだろう。


こういう場に合うもので準備しているはずだし、大手のイメージというものもある。



「大手の菓子店から行く?空いてるから」



私は奥にある菓子店を指差す。



「ホントだ。なら行こう」



企業の目の前まで行くと、ブースの中で待機中の人が気づいてくれた。



「どうぞ、こちらにお掛けください」



パイプ椅子に座ると資料を手渡された。


とても慣れているのか説明はスムーズだ。



「弊社ではリフレッシュ休暇を採用しております。有給休暇も取得率が98%と高いです。また、育児休暇の実績もあります」



そう説明されて、確かに休暇に関することがしっかり記載されている。


全国に店舗があるため正社員は転勤があるらしい。



「何か質問はございますか?」



「はい、このパソコン作業ありとは、どのくらいの作業でしょうか?」



大塚さんは資料のパソコン作業を指差しながら聞いた。



「数字をパソコンに打ち込む作業のため、特別な作業は致しません。資料をコピーしたり、取引会社から来たメールを確認したり単純なものです」



一通り質疑応答をした後は、次の菓子店へと向かう。


これを行きたいところが無くなるまで続ける。


菓子店だけじゃなく、飲食系の企業にも脚を運び説明を聞いた。



「あとは聞きたいところある?」



「私は大丈夫。大塚さんは?」



「私もいいかな」



会場に入る前に紙袋をもらったのだが、それがしっかり活用されている。


各々から資料やサンプル品などを貰ったため、それを全て紙袋に入れた。


紙って枚数が多くなると重い。



「大塚さんもお腹が空いたと思うし、海に奢ってもらいましょう」



「だね。何食べたい?」



「大塚さんが食べたい物でいいよ」



何を食べたいのか話しながら会場を出る。



「ファミレスでもいいかも。いろんなメニューあるし、ドリンクバーあるし」



確かにメニューは豊富だ。


和風も洋風もある。


テーブルも広いし。


海と合流したあと、ファミレスに行くことを伝えた。



「大塚さんは、今日は実家?」



「違うよ。そういう取引で解決したからね」



なるほど。


泊まるのを条件にしたのか。


ジトーッと海を見続ける。



「嬢ちゃん、視線が痛いっちゃ」



「気の所為」



「絶対気の所為じゃない!」



この辺にファミレスがないので、来た道を戻る。


早く何か食べたいのでは?と大塚さんに聞いてみたら、私の地元のファミレスでいいとなった。



「気になる菓子店あった?私は大手はしっかりしてるなぁって思ったかな。お給料を考えると大手だけどね」



大塚さんの言う通りに、お給料や休暇などを考えると大手は強いと思う。


でも、マニュアル式になっていて、個性はないだろう。


私は、そっち系には興味がない。



「私は、大手はやめておく。マニュアル式になっているのがちょっと」



「確かに。決まりはあるね。私も大手はいいかなぁ。転勤あるし」



「転勤があるところはダメっちゃッ!!!」



海がうるさい。


混ざってくるな。


地元に着くと近くのファミレスに入る。


ちょうど夕食時なので少し混雑はしているが、20分くらい待つと席に案内された。


さぁ、何を食べようかな?とメニューを開いたところで、聞いたことのある声が聞こえた。

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