第566話

すき焼きを食べたあとは、どこにも寄らずに家に帰る。


家の中に入ると、リビングは真っ暗だった。


あれ?


もう寝たの?


リビングの照明をつけて、買ったケーキを冷蔵庫を入れる。



「お母さんは寝ているの?それとも仕事?」



「ちょっと見てくるか。凛は先にお風呂に入って」



「うん」



自分の部屋から着替えを取り出しお風呂に向かう。


今日は疲れたからゆっくり入りたいなぁ。


お風呂から出てリビングに行くとケーキを頬張るお母さんがいた。


この時間にケーキ食べるのね?



「あっ、凛おかえり。ケーキありがとうね」



「あぁ、うん。寝てたの?」



「寝てない。仕事もしてた」



仕事も?


も、って何?


他に何かやってたの?



「麻矢。もう遅いから爆食いはおすすめしないよ」



「いいの。夜ご飯食べてないから、お腹空いちゃった。誠也と凛は美味しいものを食べたらしいじゃん」



「置いて行ったのまだ気にしているの?これが最後ってわけじゃないんだしさ」



「でも、行きたかった」



「今度、みんなで行こうよ。ねっ?」



どうやら拗ねているらしい。


だからって、ケーキを爆食いしなくてもいいと思う。


この時間から食べると胃もたれするかもよ。



「にゃー」



ケイは足元にスリスリと寄ってきた。


何?


おやつ?


それとも遊んでほしい?


ケイを抱っこしてソファーに座る。


顎下のところを撫でると気持ちよさそうにグルグルと鳴く。



「このケーキ、美味しいね」



「こだわりが強い人が作ったケーキだからね」



「へ〜ぇ、誠也より?」



「俺より強いよ」



お父さんより強いっていうか、あれはそういう性格って感じ?


旦那さんがいるからお店が成り立っているみたいだし。



「これは明日食べなね」



お父さんはテーブルにあったイチゴのショートケーキを持つ。


そして、冷蔵庫の中にしまった。



「凛、今日は早く寝なよ。麻矢もちゃんと歯を磨いてね」



「うん」



ケイを抱っこしたまま自分の部屋に戻る。


そのままベッドに横になると、腕の中にいたケイがウゴウゴと動き出した。


グイーンの私の顔を押す。



「分かったよ、そんなに強く押さないで」



ケイを離すと、ベッドの端っこへと移動する。


どうやら、今日はそこで寝るみたいだ。


この前はベッドの真ん中だった。


私は、端っこへと追いやられてしまったけど。


今日は真ん中で寝られる。


嬉しいけど、ちょっと寂しい感じもある。


ベッドに横になり寝る体勢になると、ケイがモゾモゾと動き出した。


ん?どうした?


動きは遅いが布団の中へと入って私のお腹の上へと乗ってきた。


えっ?


今日はそこで寝るの?


それは、私が重い………………


私が苦しくなる………………


………………。


………………。


まぁ、いいか。


次の朝、ケイは私のベッドからいなくなっており、1階に降りるとソファーの上で丸くなって寝ていた。


いつ出て行ったのか分からなかったな。


苦しいはずなのに熟睡してしまった。



「おはよう。朝ご飯出来てるよ」



「おはよう。今日の朝ご飯担当はお父さんだっけ?」



「いいや、違うけど。麻矢は熟睡してるから起きなくて。あのままだと朝ご飯を作る時間無くなるし、俺が作ろうってなった」



「寝るの遅かったの?」



「あれから、チーズを冷蔵庫から取り出してお酒を飲み出して。愚痴を聞かされて」



なるほど、まだ止まらなかったらしい。


そうなると、お父さんも眠いはずだ。



「お父さんも眠い?」



「凛を送った後に寝る」



「お酒抜けてる?」



「俺は飲んでないよ。麻矢は二日酔いだろうねぇ。アレ、仕事できるのかな?今日は大事な会議があるって聞いたけど、何時からなんだろう」



えっ?


それ、大丈夫なの?


朝から会議だったらもう間に合わないよね?


………………。


まぁ、自業自得ってことで。


朝ご飯を食べた後はケイにご飯をあげていつも通り自分の支度を済ませる。


準備が終わるとお父さんに高速バス乗り場まで送ってもらった。


今日はいつもより余裕を感じる。


なぜだろうか?


特別なことはないけど。


でも、余裕を感じる。


その余裕がなんなのか分からないまま到着したバスに乗り込んだ。

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