第551話
大塚さんが戻って来たのは30分くらい過ぎたあとだった。
かなり疲労した表情で戻ってきたら失敗したのかと思ったら、シュークリームは無事に完成したらしい。
なら何故そこまで疲労しているのか、と聞いたら審査員の人たちを見たら急に胃がキリキリと痛み出したらしい。
なるほど、集中力が切れたのね。
「お疲れさん。まぁ、飲み物でも飲め。そんな状態だと食べられないだろ?凛は普通に食べてるけどな」
光さんはルイボスティーを大塚さんの目の前に置いた。
私は大塚さんの向かい側でローストビーフを食べている。
隣に座っている真理亜はデザートのケーキを食べている。
それで終わりか?と思ったら、リセットするために食べているとか。
ケーキを食べてリセットするってなんだろう。
普通はお腹が膨れるものなんだけど。
2ラウンドは、パエリアが出るらしい。
他にも色々新しいものが出るとか。
「は〜ぁ、飲み物飲んで少しはスッキリしたぁ」
大塚さんは飲み物で少し落ち着いたらしい。
「西田はまだ作っていたのか?」
「作ってました。なんか巨大な何かを。デコレーションが凄かった。飴細工だと思います。白い鳥が乗ってました。ケーキの上に」
「飴細工に手を出したのか。ソレは欲張ったなぁ。見栄えを考えてのことだろうけど、飴細工は繊細な技術が必要だ。練習時間も相当必要になる。ケーキ自体の出来がどうなのか心配だな。ケーキの味と飴細工はセットだろ?どっちかのバランスが崩れるのは普通に考えてNGだ。いい先生から教わったから勝負に出たのか?俺ならやめろって言うけどな」
飴細工を使ったケーキか。
飴細工って凄く細かいけど、それを作りながらケーキも作るってことだよね?
時間が掛かりそう。
「なんか、お腹が空いてきちゃったなぁ。私も何か食べようかな」
「ローストビーフがおすすめ!あと、ちまきもオススメ!美味しいよ!」
真理亜が自分の指を何度も料理に向けて指す。
うん、そんなに強くアピールしなくていいよ。
「なら、それ食べようかな………………って、なんでこんなに料理があるわけ?えっ?会場の料理だよね?なんで!?っていうか、そのまま持って来たって感じ!?」
気づくの遅いな。
いつ気づくのかと思ったんだけど。
「食いたいもん食べろ。好きなだけ食え。なくなったら追加すればいいから。呼び出しがあるまでゆっくりすればいい。しかし、このローストビーフは確かに美味いな。ちまきも美味い。パーティーにちまきが出たのは驚きだが」
確かに、なぜちまき?とは思う。
でも美味しいものだから別にいいや。
「はいは〜い!混ぜご飯が追加で出たから持ってきたよ〜………………って、ローストビーフの減りが早い!マジかよ!さっき補充したじゃん!」
奏多は炊飯ジャーごと持ってきたらしい。
キッチンにいる人たち、驚いているんだろうなぁ。
こんなに食べる人って本当にいるんだなって。
いや、そんなこと考えている暇がないかもしれない。
「飲み物ないよ!補充して!オレンジジュースね!それと、このよく分からんゼリーはちょっと好きじゃない。私、もっと味が濃いのがいいな」
味の好みまで言い出した。
「タダ飯だからって遠慮がない。さっき、壱夜さんにこのことを報告したら笑っていた。あの人が楽しそうに笑うの久々に見たなぁ。そのくらい、これが面白いってことだろうけど。ローストビーフ気に入った?」
「お気に入り!お土産に貰いたいです。というかくれ」
「………………分かった。言ってみるから。ちまきも欲しいでしょ?」
「欲しい!家族にも食べて欲しいから多めにお願い!」
「はいはい」
さすが真理亜だ。
お土産も要求するとは。
奏多は完全にここの給仕係だな。
この人、こんなところに居ていいのだろうか?と思うけど、柚月には報告しているらしいからいいのだろう。
それから、飲み物と料理の補充をしたあと暫くして呼び出しがあった。
全ての審査が終わったらしい。
私と大塚さんは控室から出て会場へと戻った。
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