第552話
会場に入ると、ガヤガヤと賑わっていた。
招待客はそれぞれ会話を楽しんでいるらしい。
「椎名さん。あそこにいる人、有名店のパティシエだよ。よくテレビに出てる人。あっちの人はいくつもお店を持ってるオーナーだよ。日本食レストランの」
「詳しいね」
「どの人もテレビによく出てるよ。雑誌にも。正月のおせちを監修しましたって通販にも使われてるし」
第1部は料理系の人ばかりだと聞いたけど、本当にそうらしいな。
「上手い具合の就活できないかなぁ。こんなに関係者がいるなら採用してくれないかな?」
「大塚さん、それは今からだと思うよ。いい成績を残したら、もしかしたら声を掛けてくるかもしれない」
そんな簡単に話がくるのか分からないけど、もし話が来たらしっかり話は聞かなければ。
「いい成績………………3位はいい成績?」
「順位でいい成績になるって考えなの?審査員たちは用紙に書いたでしょ?その評価の事を言っているの。順位だけ言われたって、何が評価されたのか分からないでしょ?1点違いで言われてもねぇ………………困る」
「それもそうだよね。評価をしっかり聞こう!」
………………。
それはいいとして。
大塚さんが震えている。
「大丈夫?震えているけど」
「武者震いだよ」
「………………」
そう。
それだけじゃないと思うけど。
発表は壇上ではなくその下で行う。
審査員は横に並んでいる。
「皆様、お疲れ様でした。各々の審査が全て終了しましたので、これより審査発表を行います」
招待客は私たちのことなんてあまり気にしてないと思っていたが意外と見ている人がいる。
先ほどは照明の所為で見づらかったけど、今は全体が明るいから人の顔がよく見える。
あぁ、注目されているなぁ。
「評価点数は10点満点です。では、3位の発表です。評価点数は8.5点。西田茜様。飴細工を駆使したスイーツは見栄えもよく美しい作品でした」
あら、評価点数は意外と高いな。
審査員の人たちは手を抜いたわけではないと思うから、ちゃんと評価してくれたのだろう。
3位ではあるが評価点数を考えるとここは喜んでいいと思うけど、隣にいる子は喜ぶ感じではないらしい。
落ち込んでいるというわけではない。
手を握り締め必死に堪えている感じだ。
「都内にスイーツ店5店舗を経営している松坂様から評価についてご説明お願いいたします」
審査員の真ん中の人が松坂さんという人らしい。
その人はマイクを受け取り一礼した。
「え〜、クレールの松坂です。審査員代表として評価の説明を担当します。え〜、西田茜さんのスイーツですが、難しい飴細工に挑戦したのは素晴らしいと思います。一目でワクワクになりましたし、大きなリボンの重なりも最後まで織り込まれており手抜きを感じられませんでした。え〜、ただですね。ケーキの中身ですかね。ちょっと具材の量が多いかなと思います。切ることで中身の映えを狙ったのかもしれませんが、色が入りすぎて断面が悪いかなと思います。あと、スポンジのふわふわ感が足りないです。全体的に重めになってしまうので調整が必要だと感じました」
3位でも8.5点だ。
………………。
うん、ダメ出しのほうが多いかな。
飴細工の評価が高かったってこと?
「松坂様、ありがとうございました。では、続いて2位の結果をお知らせします。評価点数は9.1点。椎名凛様。定番品であるプリンを作ったことに大きな評価をいただいてます。松坂様、お願いいたします」
「はい、これは正直びっくりしました。まさか、ここでプリンを作ってくる子がいるのか、と思っちゃいました。作る工程ですが、カラメルの焦がし具合がいいですね。味に大きく変化を与えるのでカラメルソースは重要です。焦がしすぎると苦味が強すぎて子供向けではないし、焦がしが足りないとプリンの甘味が強く感じてしまう。バランスが難しいのがプリンです。ただ、生地の滑らかさが少しだけ足りないかなと思います。加熱の温度を調整してみたほうがいいでしょう。水の量も調整して下さい」
プリンを作ったということに驚いたみたいだが、カラメルソースを評価してくれたのは嬉しい。
何度も作り直したからなぁ………………
私が2位なら1位はもう確定だ。
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