第543話
プリンの試作品がやっと形に頃、柚月に呼ばれた。
なぜ、このタイミングで呼び出しなのか………………
場所は光さんのお店で、作ったプリンとシュークリームを持ってきて、とのことだ。
ということは、大塚さんもお呼び出しということだ。
大塚さんに言うとすでに海から聞いていたらしく準備はできていると言っていた。
家にプリンを作って発泡ケースに保冷剤を入れて、その中にプリンを入れて蓋をする。
これを持って歩くのは疲れるからお父さんに光さんのお店まで送ってもらうことにした。
「光のお店で作っても良かったんじゃないの?」
「それも考えたけど、材料を持って行くより作ったものを持って行くほうが楽だと思ったの」
「あぁ、それもそうだね」
道具は揃っているかもしれないけど材料はこっちから持っていくし。
卵を持って行くのはちょっと怠いなって。
お店の前まで着くと私を降ろしてお父さんは中に入らず家に帰って行った。
柚月に会いたくなかったんだろうなぁ。
お店の中に入るとお客さんの姿はなくエプロン姿の光さんがカウンターに座り飲み物を飲んでいた。
これはお店をやっていないな。
「光さん、こんにちは。今日はお休みですか?」
「ん〜、午前中だけだ。午後からお前ら来るからよ。アイツが来るなら店は開かねぇよ。仕事にならん」
そっか。
仕事にならないか………………
確かに、気になってしょうがないよね。
で?柚月は来ているのかな?
「柚月は来てますか?」
「まだ、来てない。奥の部屋には海と希ちゃんが来てるぞ」
呼んだ本人は遅れて来るのかよ。
まぁ、別にいいけどさ。
「そうですか」
「何か飲むか?食べ物でもいいぞ。スイーツでもいい」
「エプロン姿なのはそのためですか?」
「いや、脱ぐの忘れてたわ」
「炭酸飲料水ありますか?」
「あるぞ。珍しいな。炭酸系を頼むなんて」
「シュワシュワ系が飲みたくなりました。なんか、スッキリでガツんとくるような感じの。頭がスッキリするような」
「………………なんか悩みでもあるのか?そんな注文するとか」
「ただ飲みたいだけです」
暑くなってきたからかな?
冷たい飲み物が飲みたい時期になった。
朝晩はまだ冷えるけど、冷え込みは落ち着いてきた。
「レモン系にするか。スッキリで目覚めるぞ」
「はい、お願いします」
私は奥の部屋に行き引き戸のドアを開ける。
部屋の中には海の膝の上に座っている大塚さんがいた。
う〜ん、これはごめんなさいって謝ったほうがいいのか?
それとも、何をしているの?って言ったほうがいいのか?
でも、今から柚月が来るからやめようって言ったほうがいいかな?
「あの、椎名さん。無言で見ないで。何か言ってよぉ」
「あっ、ごめん。ちょっと、なんて言っていいのか分からなくてさ。えっと、お邪魔しちゃったかな?」
「違う!お邪魔してないよ!もう!私言ったじゃん!そろそろ椎名さんが来るからやめてって言ったじゃん!」
そうなんだ、やめてって言ったんだね。
でも、やめてくれなかった………………
「んなこと言われてもなぁ。最近、構ってくれんから寂しいん。じゃれつきたいんよ!恋人イチャイチャしとーで!」
なるほど。
大塚さんはシュークリーム作りで忙しかったんだね。
私と一緒だ。
最近のケイはツンツンしている。
きっと遊んでもらえないからだ。
床をポンポンと尻尾で叩いているのをよく見かけるのだ。
それも、私の目の前でよくやる。
お母さんとお父さんの前ではやらないらしい。
本当に申し訳ないと思っている。
でも、やることを優先しないとお父さん怒るし。
………………。
うちって、お母さんよりお父さんのほうが厳しいところあるかもしれない。
「お〜い、嬢ちゃん。戻ってこ〜い。無のまま立たんで。こっちに座りぃ」
「あぁ、ごめん。海がうちの猫と一緒だなって」
「猫?」
「構って貰えないからツンツンしているんでしょ?」
「………………嬢ちゃんの考えアホ酷いっちゃ」
そんなことより………………
「そろそろ来るから離してあげたら。それを見たら絶対に弄られるから。それでもいいならそのままでいいけど」
「あ〜、それは嫌だわぁ」
そうでしょう?
私が見てもキツイと思うから、柚月が見たらもっとキツイと思うはず。
「ねぇ?何、イチャついてるわけ?」
あっ、遅かった。
後ろを振り向くて私服姿の柚月が立っていた。
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